
IT関連の職種には意味不明のものが多い。別にカタカナ英語ばかりだからというわけではない。何と言うか、名が体を表していないんだよね。特にプログラマー、システムエンジニア(SE)、アーキテクトは「どんな仕事ですか?」と聞かれて、明快に答えられる人がIT関係者の中にどれだけいるのだろうか。例えばプログラマーの皆さんに聞くが、プログラマーの「本来の仕事」はプログラムを書くことじゃないよね。
この「極言暴論」をあまり読んだことのない人は「何を訳の分からないことを言っているんだ」と思ったことだろう。ただ、以前の記事でも少し触れた通り、プログラマーの本来の仕事はプログラミングではない。本物のプログラマーとは、プログラミングを手段として何かをつくり出すことを目的に仕事をしている人である。裏を返せば、仕事の目的がプログラミングではない人である。
関連記事 空前の人材不足で勘違いする技術者が続出、あなたの人月商売に明日はないぞそれでも「いやいや、プログラミングがプログラマーの仕事だろ」と反論する人が大勢いると思うので、他の仕事と比較しながらもう少し説明しておこう。他の仕事とは、我々のような記者、あるいは小説家やコピーライターなどの仕事だ。私はまさに今、この極言暴論の原稿をヒイヒイ言いながら書いている。ただし、私の仕事は「文章を書く」ことではない。ましてや小説家らと同じ仕事であるわけがない。文章を書くことを手段として記事を生み出しているのである。だから記者というわけだ。
納得いただけただろうか。記者や小説家、コピーライターなどを総称して「ライター」や「物書き」と言えば、その意味するところがよりはっきりするだろう。文章を書けるだけではライターとは言えないのと同様に、プログラマーを書けるだけではプログラマーとは言えないのだ。ところが日本では、プログラムを書きさえすれば(本物の)プログラマーだと、なぜか勘違いされている。そして当然、そんな勘違いが生んだ「プログラミングしかできないプログラマー」の市場価値は恐ろしく低い。
こうした勘違いを自らのビジネスに巧みに組み込んだのが、言わずと知れた、我らが人月商売のIT業界である。SIerや下請けITベンダーは「プログラミングしかできないプログラマー」の価値は低いと正しく認識し、多重下請け構造の下層で、使い捨て要員として長く働かせてきた。仕様書通りにプログラミング(=コーディング)するだけならば、つまりプログラミングしかできないのならば、本来はプログラマーではなくコーダー(コーディング作業員)にすぎない。
さらなる問題はここからだ。プログラマーという仕事に対する勘違いが根深いためか、人月商売のIT業界とは無縁のテックかいわいにも、勘違いが広がっている。「プログラミングがプログラマーの仕事」と思い込み、美しいコードを書いたり、新しいプログラミング言語など最新技術を習得したりすることだけに血道を上げる自称プログラマーは大勢いる。おいおい、美しい文章を書いても、難しい漢字や言い回しを知っていても、それだけじゃ物書きと言えないのと同じだぞ。はっきり言ってしまえば「上級コーダー」にすぎない。
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