このままではCOCOAの二の舞に

 そもそもマイナンバー制度は、社会保障と税の一体改革を推進するうえで不可欠なものとして設けられたと記憶している。日本の財政も社会保障制度も今のままじゃ持続可能じゃないからな。税金を取るべき人からきちんと取って、社会保障が必要な人に間違いなく届けられるようにする。さらに、国民に対する行政サービスの利便性を向上させつつ、行政の業務効率化を実現する。マイナンバー制度やマイナンバーカードはそのために必須のインフラであったはずだ。

 そして今、デジタル後進国ニッポンを復活させるため、短期的には新型コロナ禍対策のためにDXの推進が不可欠で、その要がマイナンバー制度なんでしょ。実際に、2020年春に新型コロナ禍に襲われた際、全国民に一律10万円を給付しようとして大混乱が生じた。覚えていると思うが、マイナンバーと公金給付用の銀行口座がひも付けられていないので、米国などのように迅速に振り込めず恐ろしく時間がかかった。さらに、マイナンバーカードを持つ人限定のオンライン申請も、システム面の不備で大幅遅延するというおまけまで付いた。

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 だから本来なら今、政府はマイナンバー制度の整備加速やマイナンバーカードの取得義務付けなどを国民に提起しないといけないはずだ。なのに、銀行口座のひも付けについても「7500円分のポイント進呈」といった具合に国民をお金で釣るらしい。「あんたらはPayPayか楽天ペイメントか」と言いたくなるが、もはやとやかく言わない。だったら、それに併せてマイナンバーカードを取得することなどの必要性を、国民にきちんと訴えて支持を取り付けたらどうだ。愚民政策と民主主義の正攻法の組み合わせなので、これでプラスマイナスゼロだ。

 依然としてマイナンバー制度に対しては、反対している人や不安視する人が大勢いる。そりゃ当たり前だ。国民を利で釣りながら、なし崩し的にマイナンバーカードの取得義務化などを推し進めようとしているのだからな。それだからこそ、マイナンバー制度の議論を自ら蒸し返して、日本のDXなどのために、よりスピーディーでより良きものにしていけるよう、合意を取っていくことが必要だと思うぞ。それこそがDXの推進などに欠くことができない政治のリーダーシップというものだ。

 さて、そんな状況のなかで運用が始まったワクチン接種証明書アプリの運命はいかに。もちろんマイナンバーカードを取得していない6割の国民のうち、どれだけの人が利で釣られるか次第だ。ただ前回の「新規取得者に5000円分のポイント進呈」キャンペーンでも動かなかった人たちだからな。最終的に「総額2万円進呈」となるわけだから、どうなるかは分からないが、政府の「捕らぬたぬきの皮算用」となる可能性がある。

 とりあえず、海外渡航者向けのほうの証明書は機能するだろうけど、国内向けはアプリの普及次第で使いものになるかどうかが決まる。新型コロナの感染拡大時でも接種証明書によって飲食店やイベントの行動制限を緩めるとのことだが、はたしてどうか。接種証明書アプリ(と紙の証明書)を持っている人が半分にも満たないなら、客を断りたくない飲食店は適切な対応ができず、困ってしまう事態になりかねない。

 そんな訳なので、このままではCOCOAと同様、接種証明書アプリも使われないまま事実上のお蔵入りといった末路をたどる可能性が高い。よく考えると、接種証明書アプリを何に使うのか、絶対に使わないといけないのかといった議論もほとんどできていないよね。外国では強制的なロックダウン(都市封鎖)などと同様、明確な制度として接種証明書アプリが運用されている。一方、日本では現場任せ、国民任せで「うまく活用してください」のレベル。だから、やはり「とりあえずつくってみたアプリ」と言うしかない。

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