接種証明書アプリも国民を利で釣る一環か
ここまで接種証明書アプリをあしざまに言うと、実際に開発に当たった技術者ら関係者はさぞかし不愉快かと思う。ひとまず、おわび申し上げる。何せ現場のあなた方の責任ではないからな。首相をはじめとする政治家や政府の意思決定の一端を担うキャリア官僚らの怠慢、あるいは思考停止に対して文句を言っているだけである。マイナンバーカードの普及率が4割の状況のまま、マイナンバーカードの利用を前提としたアプリをつくるのは、悪手以外の何物でもない。
「いやいや、マイナンバーカードの普及を待っていたらやれることもできないのだから、とりあえず見切り発車するほうが正しいのではないか」。そんなふうに反論する読者もいるとは思うが、それは違うぞ。マイナンバーカードの取得を全国民に義務付けること。まずはそれが先だ。政府は行政をはじめとした日本全体のDX、社会のデジタル化に向けての必要不可欠な社会基盤として、マイナンバーカードを位置付けているわけでしょ。実際に、接種証明書アプリを使ううえでも不可欠だ。なのに取得を義務化しないのは、いったいどういうことか。
もちろん、なぜ義務化しないのかの「理屈」は私も分かっている。何せ、これまでに企てられた少額貯蓄等利用者カード(グリーンカード)制度や、住民基本台帳ネットワークシステム(とそのカード)は「国民総背番号制だ」「国家によるプライバシーの侵害だ」などとボコボコにされて、大失敗に終わったからな。マイナンバー制度はそれを教訓化して、今まで以上に慎重に推進しようとしているわけだ。「カードの取得はあくまでも国民の皆さんの意志に基づくものであって、義務化などとんでもない」といったところだろう。
で、マイナンバーカードの普及のために何をやっているかというと、ひたすら国民を利で釣ろうとしている。きれいな言葉で言えば「マイナンバーカードの利便性を高めることで利用を促す」とでもなるのだろうけど、本質は利で釣っていることにほかならない。その最たるものは、再び2022年1月から始めたマイナンバーカード取得者への「5000円分のポイント還元」だ。露骨に国民をお金で釣ろうとする試みで、愚民政策以外の何物でもないと思うが、いかがか。
そういえば、接種証明書アプリも国民を利で釣る一環として位置付けられているのかもしれないな。「マイナンバーカードを取得すれば、新型コロナ禍対策で必要なワクチン接種証明書を簡単に取得できます」というわけだ。2021年10月に運用を開始した、マイナンバーカードを健康保険証として使う「マイナ保険証」もしかりである。運転免許証をマイナンバーカードに統合する取り組みも控えるが、これも利便性の向上、国民を利で釣る一環とのレッテルを貼り付けてもよかろう。
政府としては、健康保険証などをマイナンバーカードに統合してカードの利便性を高め、今後始める「健康保険証と一体化させれば7500円分のポイント進呈」などのキャンペーンで国民を釣る。さらに「接種証明書アプリなどを使いたいならカードを取得してください」と国民に迫る。そうすることで時間はかかっても普及率を高めていき、マイナンバーカードを標準の健康保険証や運転免許証などとする。そうすれば別に義務化しなくても、事実上の義務化が完成する。
まあ、そんなところだとは思うが、それっておかしくないかい。行政をはじめとした日本全体のDX、社会のデジタル化に向けての必要不可欠な社会基盤としてマイナンバーカードを位置付けるならば、法律を改正して取得の義務化を明確にすべきなのだ。歴代内閣がスルーしてきたからといって、現内閣でもスルーしているようでは、デジタル後進国に落ちぶれた日本の復活なんてありゃしないぞ。
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