世界を股に掛けたビジネスを展開する三菱商事と、福岡県で鉄道・バス事業を地域密着で営む西日本鉄道。異色の組み合わせで生まれた企業がネクスト・モビリティ(福岡市)だ。AI(人工知能)を活用したオンデマンドバスを実用化し、全国の交通事業者に売り込み始めた。「CASE」で自動車ビジネスが大きく変化する中、モビリティーサービスの創出を目指す三菱商事が頼ったのが、地方交通の課題に直面している西鉄だった。

AIデマンドバス「のるーと」に取り組む西日本鉄道の日高悟氏(左)と三菱商事出身の藤岡健裕氏(右)

 「組んだ相手が西日本鉄道という地方のバス事業者で、本当によかった」。AIを活用したオンデマンドバス「のるーと」を全国展開するネクスト・モビリティの藤岡健裕副社長兼CSO(最高戦略責任者)はそう話す。同社は三菱商事と西鉄が50%ずつ出資して、2019年3月に設立された。藤岡氏は三菱商事出身で、16年からこのプロジェクトに携わっている。

 三菱商事は、三菱自動車やいすゞ自動車と組んで海外で車の現地生産や販売、販売金融、アフターサービスなどバリューチェーンに深く関わってきた。ところが自動車業界では自動化、電動化など「CASE」の波が押し寄せ、ビジネス構造が大きく変わろうとしている。現在の事業の在り方では「10年後は厳しいという危機感がある」と藤岡氏。これまでバリューチェーンの川上から川中までを手掛けてきたが、モビリティーサービスという川下分野への進出を探り始めた。

 そうはいっても、ノウハウがあるわけではなく、そもそもどこに商機があるのかすら分からない。そこで、まずは日本で課題を探そうと、バス事業者へのヒアリングを始めた。「全国の主要なバス事業者はほぼ訪れた」(藤岡氏)。ヒアリングを重ねて分かったのは、課題は全国でほぼ同じということ。どの事業者も、利用者の減少とドライバー不足を挙げた。「この2つの課題を解決するソリューションをつくれば、全国に展開できる」と藤岡氏は考えた。

 一方で、課題は共通とはいえ、事業者ごとに温度差があると感じた。大都市を中心に路線バスを運行する事業者は、まだそれほど切迫感がない。そんな中、課題を直視し、新たな取り組みの必要性を感じていることが伝わってきたのが西鉄だった。藤岡氏は西鉄をパートナーにしたいと強く思ったと振り返る。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1991文字 / 全文2931文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

オリジナル動画が見放題、ウェビナー参加し放題

日経ビジネス最新号、9年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「地方発 イノベーションの現場から」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。