2021年3月、全国初となる自動運転「レベル3」の認可を受けた無人自動運転車の本格運行が始まった。自動運転といっても安全確認や緊急時の対応のためにドライバーが乗るのが一般的だが、ここでは完全無人で、非常時には遠隔監視室のスタッフが対応する。驚くのは、全国初の実用化が、過疎に直面する福井県永平寺町で行われていることだ。

無人運行を実現した“頭脳”は、意外なところにあった。一見すると、山あいの道路沿いによくある空き店舗。しかし店内の奥へと進むと、壁一面に液晶ディスプレーが設置され、自動運転車のカメラから送られてくる車両の周囲や車内の映像が映し出されていた。ここは福井県永平寺町の第3セクター、まちづくり株式会社ZENコネクトが3月に本格運行を始めた自動運転の遠隔監視室。閉店したラーメン店の跡地に設けられている。
自動運転は国際的に5段階に区分けされており、「レベル2」まではドライバーによる監視が必須。「レベル3」になると「条件付き自動運転」と呼ばれ、監視の主体がシステム側に移る。緊急時など必要に応じてドライバーが操作する必要はあるが、必ずしも車両に同乗する必要はなく、遠隔での操作も認められている。永平寺町はレベル3の自動運転車を遠隔監視することで、全国で初めて安全監視スタッフが同乗しない無人運転を始めた。

もっとも、走っている車両を見ると拍子抜けしてしまうかもしれない。ベースとなっているのはヤマハ発動機がゴルフ場向けに製造している小型の電動カート。最高速度は時速12kmで、走行するのは町内にある曹洞宗の大本山・永平寺の門前周辺の遊歩道だ。片道約2kmを10分かけて走る。同じく国土交通省からレベル3と認められたホンダの「レジェンド」が高速道路を時速30~50kmで自動走行するのとは全く趣が違う。
しかし当の永平寺町は真剣だ。
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