素のままの自分でいればいい

―― 最後に、ryuchellさんにとっての「自分らしさ」とは何ですか?

ryuchell すごく難しいんですが、皆さんが思っている「ryuchell」のイメージってあると思うんです。例えば、誰かが僕に誕生日プレゼントをくれるとします。「これ、ryuchellが好きだと思って」って。でもその中身が「え、これ僕、全然好きじゃないんだけど」というときがあります。この時点で自分らしさって、その人には伝わっていないんですよね。

 「こうなりたい」「ああなりたい」と思う自分がいるのに、人は「ryuchellって、こうでしょ」「ああでしょ」って全然違う僕を見ていることもある。

 僕は人から「個性的」だと言われるのですが、僕にしてみれば、ただ自分の好きなファッションを身に着けているだけです。何が人と違うのか、正直言うと、自分ではよく分からない。僕は「自分らしくいよう」っていうことを全く意識せずに、直観で、自分に素直に生きているだけ。

 例えば「自分は本当はこんな仕事がしたいんだけど、誰かにこう言われたから、こうしてみようかな」と思ったら、これは見ようによっては自分らしくないかもしれない。でも、誰かに言われたことに従ったということは、その仕事を選んだという選択が自分らしかったりするのかな、というぐらいの感じです。

 僕は好きなものははっきりしていますが、好みは時によって変わります。以前はヘアバンドとチークがトレードマークでした。当時の僕にとっては、あれが一番自分にとってかわいいファッションだと思っていたから。でも今は違います。人には「(あのときと比べて)変わったね」と言われますが、自分にとっては、そのときに好きな自分でいるだけのこと。「これが自分」なんて決めなくていい。そのときの素のままの自分でいればいいんです。

 僕が初めてテレビに出たのは、(日本テレビ系の)「行列のできる法律相談所(現・行列のできる相談所)」でした。その前に実は別の収録番組があったんですが、自分が出ている場面が全部カットされていたんです。悔しくて泣いていたら、ぺこりんに「もっといつも私に話しているときのryuchellそのままで行けばいいんじゃない? それが一番面白いもん」って言われて。「あ、僕、中学校時代の自分に戻っちゃってたな」って思いました。

 テレビに出るのだから、いろんな人も見るだろうし。変に受け取られたら「これ、ぺこりんの彼氏だよね」って、ぺこりんにも迷惑を掛けてしまうって思って。だから、声のトーンも低くして、収録があった1日だけ、まるっきり中学校時代に逆戻りしていたんです。そして次の週ぐらいに「行列~」の収録があって、そこではいつもの僕の全開でいったらうまくいった。あの経験はすべてひっくるめて自分らしさだと思っています。


【書籍情報】
ジェンダーにまつわる
アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)による
1200もの「駄言」が教えてくれたものとは?


早く絶版になってほしい
『#駄言辞典』

編集:日経xwoman
発行:日経BP
定価:1540円(10%税込)
 Amazonで購入する

取材・文/小田舞子(日経xwoman) イメージ画像/PIXTA

日経xwoman2021年11月1日掲載]情報は掲載時点のものです。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「職場で、家庭で聞いた。言われた。心をくじく駄言」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。