2021年6月10日発売の『早く絶版になってほしい #駄言辞典』(日経BP)。ジェンダーにまつわるステレオタイプから生まれる400を超える「駄言」を、エピソードとともに紹介している本書を、東レ経営研究所 ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部 チーフコンサルタントの塚越学さんはどう読んだのでしょうか。

上の立場にいる人ほど率先して学ぶべきだ

 『#駄言辞典』第1章にある数々の駄言の実例については、「こう言われたらイラッとするよね」「みんなもそう思ってるんだ」……と、うなずきながら読みました。第2章のキーパーソン6人へのインタビュー編も必見ですね。どうインタビューしたらこんなに読み応えのある内容になるんでしょうか。それぞれの立場の人が、この問題をどう見ているかが克明に描かれていました。

 (立命館アジア太平洋大学学長)出口治明さんはズバリ、「駄言が生まれる理由は不勉強だ」と述べていました。確かに皆が出口さんのように勉強すれば、駄言はなくなるだろうと思います。

 でも、正直に言うと、実際に出口さんレベルまで勉強できるかというと、しんどそうだな、とも思ってしまった。さまざまなテーマの情報を、努力して自分から取りにいかなければいけませんからね。でも、そんなことを言っていられないのも現実。経営者や組織の中で上の立場に立つ人は、率先して勉強する必要があります。

 複数の調査により、組織の中で高いポジションにいる人ほど、言いたいことを言えているという事実が分かっています。逆に、配下の人たちは言いたいことをあまり言えていません。だからこそ、高いポジションにいる人は自分の価値観をアップデートし続け、配下にいる人たちが本音を言い出せるような心理的安全性を確保する必要がある。上位者にとっては、それも大事な仕事の一つなのです。

 また、組織の上のほうにいる人ほど、自分が思ったことをすぐ言ってしまう傾向があると思います。上にいる人に必要なのは自分の発言に対する慎重さです。思ったことを瞬発的に言うのではなく、「自分が今から言おうとしていることの背景には、何らかの思い込みがないだろうか」「これを口にしたら相手を傷つけないだろうか」と、ひと考えしてから言葉を発するべきです。

 『#駄言辞典』の第2章で、杉山文野さんが「知らなかったでは済まされない駄言もある」と述べています。ポジションが高い人ほど、「知らなかったでは済まされない」ケースが多くなると思います。

 例えば、組織の上層部にいる人は、若いとき、ある程度のプレッシャーの中で歯を食いしばって実績を上げて、今の地位に来たという自負があるのかもしれない。それを踏まえて、過去の自分がしたのと同じような負荷の高い働き方を部下に求めてしまい、よかれと思って言葉でプレッシャーをかける場合もあるでしょう。子を思って余計なことを言ってしまう親の振る舞いと似ていますよね。でも、自分が若いときとは時代や価値観が変わっている可能性が大いにあります。だからこそ、今の若手の価値観などを知るように努力すべきです。

「高いポジションにいる人は自分の価値観をアップデートし続け、下にいる人たちの心理的安全性を確保する必要がある」と塚越さんは言う
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【書籍情報】
ジェンダーにまつわる
アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)による
1200もの「駄言」が教えてくれたものとは?


早く絶版になってほしい
『#駄言辞典』

編集:日経xwoman
発行:日経BP
定価:1540円(10%税込)
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【目次】
・駄言とは?
・まえがき
・第1章…実際にあった「駄言」リスト
 女性らしさ/キャリア・仕事能力
 生活能力・家事/子育て
 恋愛・結婚/男性らしさ
・第2章…なぜ「駄言」が生まれるか
 スプツニ子!/出口治明/及川美紀
 杉山文野/野田聖子/青野慶久
・第3章…「駄言」にどう立ち向かえばいいのか
・あとがき

続きを読む 2/2 客観的な事実も、時代とともに変容する

この記事はシリーズ「職場で、家庭で聞いた。言われた。心をくじく駄言」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。