暗号資産(仮想通貨)や、そこから派生したデジタル資産の動向を紹介する本連載。前回の「1年半で9兆円流入! 知られざる分散型金融「DeFi」の正体」では、金融機関の代わりにブロックチェーン上のプログラムで金融サービスを実現する「DeFi(分散型金融)」について解説した。連載の最終回に取り上げるのは、資産としての裏付けがない仮想通貨の「代案」として脚光を浴びる「CBDC(中央銀行が発行するデジタル通貨)」。途上国の一部で実際の利用が始まり、中国は「デジタル人民元」の大規模な実証実験に乗り出した。日本でのCBDCはどうなるのか。日本銀行の神山一成決済機構局長に聞いた。

神山一成(かみやま・かずしげ)氏
日本銀行決済機構局長。1990年東京大学経済学部卒業、日本銀行入行。2011年企画局政策企画課長、15年前橋支店長。17年から米州統括役ニューヨーク事務所長を務め、19年調査統計局長。20年から現職。東京都出身。

日銀は2021年4月、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の実証実験を始めました。なぜこのタイミングなのでしょうか。

神山一成決済機構局長(以下、神山氏):情報通信技術の急速な進歩が理由です。内外の様々な領域でデジタル化が進んでおり、CBDCはデジタル社会にふさわしい利便性の高い決済システム、決済サービスの提供につながる可能性が出てきています。BIS(国際決済銀行)の最近の調査でも、65の中銀のうち86%がCBDCのメリット・デメリット分析をしており、その多くが概念実証やパイロット実験を行っています。

 これだけ多くの中銀が取り組んでいることを考えると、将来CBDCを1つの要素とする決済システムが世界のスタンダードになる可能性は小さくありません。だとすると、現時点でCBDCを発行する計画はないとしても、いざというときに日本が取り残されないようにしっかり準備しておくことは中銀としての責務でしょう。

 もともと日銀は数年前から取り組んできました。分散型台帳(ブロックチェーン)技術が出てきたときにECB(欧州中央銀行)との共同プロジェクトとして、CBDCに応用しうる実証実験を行いました。昨年10月に(取り組み方針を)公表したのは、そうした検討のギアを一段上げるということです。今回の実証実験では、企業や個人も使う一般利用型のCBDCを念頭に置いて、基本的な機能や具備すべき特性が技術的に実現可能かどうかを、より広範に検討していきます。

 取り組み方針を公表してからまだ半年強ではありますが、CBDCを1つの要素とする決済システムが世界標準となる可能性は、その間にも確実に高まりました。海外ではバハマや東カリブが実際に発行しています。中国もデジタル人民元の実験を精力的に行っています。新興国では、固定電話の普及を待たずにスマートフォンが急速に広がったように、既存の社会インフラが必ずしも十分に整備されていないなかで新しいサービスが一気に広がるリープフロッグ型発展が時々起きます。

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