OSS開発者に活動資金を

 一例が、20年1月に日本発で動き出した「Dev Protocol(デブプロトコル)」。15年設立のフレームダブルオー(東京・渋谷)が開発し、オープンソースソフトウエア(OSS)の開発者が活動資金を調達できるようにした。

 OSSは、誰でも広く使えるように設計図であるソースコードを無償で公開するソフトウエアのこと。仮想通貨を実現するビットコインやイーサリアム、コンピューターのOS(基本ソフト)であるリナックスなど、広く使われるようになれば社会基盤となり得る。その一方で、無償で使えるため個人や企業のスポンサーが付きにくく、1年以内に8割のプロジェクトが頓挫するとされる。

 編み出したのはスポンサーと技術者が「資産」を分け合う方式だ。スポンサーは市場などからDev Protocolのトークンを購入し、応援したいOSSプロジェクトにトークンを預ける。トークンを預けている間は新たなトークンが発行され、それを技術者とスポンサーに配分する。スポンサーが預けたトークンが増えると、トークン全体の発行数が減って価値が高まるよう設計することでスポンサーになるメリットを高めた。

 開始から1年余りの21年4月時点でスポンサーからの支援額は計2.5億円超に上った。イーサリアムの創始者が考案したコンピューター言語など、海外を中心に1000万円以上を集めるプロジェクトが複数生まれている。

 フレームダブルオーの創業者である原麻由美氏は11年にウェブマーケティング会社を起こし、神社仏閣の建築や補修を行う職人から後継者探しの相談を受けた。高い技術と経済的評価が見合っていない現状を知り、収益化の手段を模索し始めた。そんなとき、ブロックチェーン技術者からDeFiの存在を教えられたという。原氏は「現在はブロックチェーンに理解があるOSSの開発者を主な対象にしているが、将来は伝統技術の伝承者やクリエーターが資金を調達できるプラットフォームに成長させたい」と話す。

「分散型で自律した組織」を生み出す

 高いリテラシーを持つOSS開発者のような層とは異なる人たちを対象とする取り組みも実際に始まっている。アニメだ。一般社団法人のオタクコイン協会は、独自に「オタクコイン」を発行するなど、NFTやDeFiを活用してアニメ文化の発展に貢献しようと活動している。

 アニメの業界では海賊版の流通が止まらず、アニメーターや漫画家、プロデューサーらの経済的な見返りは必ずしも十分ではない。同協会運営事務局長の安宅基氏は、「アニメスタジオがDev Protocolに参加してスポンサーから資金を集め、作品づくりに集中できれば面白い」と語る。スポンサーは報酬として完成した作品を楽しめるだけではなく、例えば、アニメの1シーンをNFTとして受け取れるようにするといった構想だ。

 アニメや漫画のファンのような「共通の価値観」を抱く人たちをブロックチェーンでつなげれば、愛好家が集まる自由な経済圏をつくれる。安宅氏は「サッカーやテニスなど熱狂的なファンがいるコンテンツなら、広まる可能性があるのではないか」と話す。

 Dev Protocolを開発したフレームダブルオーの原氏は、「1~2年後には自分たちが管理者の立場を離れる。フレームダブルオー自体はサードパーティーとしてDev Protocolに貢献するだけになる」と語る。「DAO(分散型自律組織)」と呼ばれる、管理者不在の自律的な組織。それが、ブロックチェーンによって目指す世界の共通理念になりつつある。

 仮想通貨と、その基盤であるブロックチェーンが社会にもたらした影響を追いかけてきた本連載。最終回となる次回は、仮想通貨への一つの対抗措置として各国で検討が進む「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」について、日本銀行に聞いていく。

この記事はシリーズ「仮想通貨狂騒曲」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。