有力サービスをコピーしたニセモノも

 ただ、異常なほどの膨張の要因は、「大きくお金を動かせる人がDeFiの主な参加者になっている」(堀次氏)ことにある。そのきっかけとなったのは、有力なDeFiとして注目されていたレンディングサービス「Compound」だ。20年に、サービスの利用実績に応じて「ガバナンストークン」を配布することになったのだ。

 管理者がいないDeFiでは、内容を変更する際に参加者の意見を集約して決定する。その「投票権」がガバナンストークンだ。株式会社における株式のような位置付けだ。プログラムの質が高い、つまり金融サービスとしての価値が高ければ、トークンの値上がりも期待できる。Compoundでトークンの配布が始まってトークンを売買できるようになると、Compoundに流入した資産価値が急騰。これを見たほかのDeFi運営者もトークンを配布するようになり、市場全体が膨らんだ。

ブロックチェーン上のプログラムが金融機関の代わりに参加者同士をつなげるDeFiには、新しい資産の預け先としての価値と、これまでできなかった金融サービスを実現できるという価値がある(写真:Shutterstock)
ブロックチェーン上のプログラムが金融機関の代わりに参加者同士をつなげるDeFiには、新しい資産の預け先としての価値と、これまでできなかった金融サービスを実現できるという価値がある(写真:Shutterstock)

 この「バブル」には落とし穴もある。

 「年利100%超の超高金利」「トークンを配布」──。こんなうたい文句の新たなプログラムが頻繁に登場し、1~2週間などの短期で売り抜けた人間が利益を得て、残された人が廃れたDeFiで立ち往生する事態になっているのだ。

 DeFiはソースコードが公開されており、「プロダクトの開発速度が上がる半面、実績あるプログラムのコピーが容易」(HashHubの平野淳也CEO)だ。悪意を持った人物が有力なサービスのコードを流用して立ち上げたとみられる詐欺的なサービスもある。悪意がなくても、優秀なコードを改変した結果、システムに脆弱性が生まれ、不正流出が起きるケースも相次ぐ。

 堀次氏は「開かれたプラットフォームだからこそ、良くないプロトコルを『主観』で排除することは容易ではない」と吐露する。DeFiの売りである「管理者不在」は、マネーロンダリング(資金洗浄)対策や上場審査といった、既存の金融会社がコストをかけて実現してきたセキュリティーが存在しないという意味でもある。

「金融包摂」の理想には遠く

 玉石混交でリテラシーが十分にないと手を出しづらい現状は、DeFiに期待されてきた「金融包摂」の理想には遠い。

 元財務官の武内良樹氏はDeFiについて「間違ったときに修正するのが難しく、不正など何かがあったときに当局が処分できない。国境を越えてのマネロンも容易だ。金融とブロックチェーンの親和性は高くないのかもしれない」と指摘する。

 そんな中で、参加者間の利益とリスクをプログラムが自動で調整するDeFiの考え方をコミュニティーのデザインに応用する例も出てきた。

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