ソニーグループの吉田憲一郎会長兼社長CEO(最高経営責任者)は「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」という「パーパス(存在意義)」を掲げ、社長就任3年目の2021年3月期に純利益1兆円超えを果たした。今のソニーの強さの根源は何か。そしてさらなる成長に向けた課題はどこにあるのか。『パーパス経営』などの著書がある一橋ビジネススクール客員教授の名和高司氏に聞いた。

1957年生まれ、熊本県出身。1980年東京大学法学部卒業後、三菱商事、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て2010年に一橋大学大学院教授に。現在は一橋ビジネススクール客員教授。ファーストリテイリングや味の素などの社外取締役も務める。
ソニーグループの平井一夫前社長は「ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)」という形で会社の方向性を指し示しました。吉田憲一郎会長兼社長CEO(最高経営責任者)は「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」という「パーパス」を掲げています。ミッションとパーパスの違いはどこにあるのでしょうか。
名和高司氏(以下、名和氏):ミッションは「使命」、つまり与えられたものだ。一方でパーパスは自分の心からの思いがこもった、内側から出てくるもの。MVVはきれい事になりがちだが、今の時代は自分たちが何をしたいか、達成したいかという思い(パーパス)が求められている。
パーパスをひもとくには原点に戻る必要がある。パーパスにはその会社らしさがなければならないからだ。ソニーならば盛田昭夫氏や井深大氏の時代の精神に一旦戻りつつ、今度は未来に向けて自分たちがどんな存在になりたいのかを考える想像力が求められる。
確かに最近は経営のキーワードとして「パーパス」という言葉をよく聞きます。
名和氏:2015年に登場した「持続可能な開発目標(SDGs)」の存在が大きい。SDGsは世界の共通語になっているが、達成に向けて動いたところでそこに会社らしさは何もない。教科書的な、いわば「規定演技」だ。
そこで改めて「自由演技」が問われ始めた。すなわち、あなたの会社は何をしたいのかというアイデンティティーだ。20年後や30年後にどういう社会にしたいのか、何を実現したいのか。こういったことを「自分事」として外部に発信していくプロセスが大事になっている。
吉田氏が掲げたパーパスは平井氏のMVVに通ずる部分もあります。
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