10年単位での変革の積み重ねで、2021年3月期に純利益1兆円超えを果たしたソニーグループ。1990年代に経営トップとしてデジタル変革に挑んだのが出井伸之氏だ。「現在の経営についてコメントしない」と前置きしつつ、ソニーの本質について語り始めた。

<span class="fontBold">出井伸之(いでい・のぶゆき)氏</span><br> クオンタムリープ会長・ファウンダー。1937年生まれ。60年早稲田大学を卒業後、ソニー入社。95年社長就任。会長兼CEO(最高経営責任者)などを歴任し、10年にわたり経営トップを務める。2006年にクオンタムリープ設立。(写真:北山宏一)
出井伸之(いでい・のぶゆき)氏
クオンタムリープ会長・ファウンダー。1937年生まれ。60年早稲田大学を卒業後、ソニー入社。95年社長就任。会長兼CEO(最高経営責任者)などを歴任し、10年にわたり経営トップを務める。2006年にクオンタムリープ設立。(写真:北山宏一)

出井伸之氏(以下出井氏):前から言っていますが、今のソニーの経営についてはコメントしないって決めている。責任のない自由な立場でOBが発言するのは好きじゃないからね。ただ、ソニーの本質について語るのは問題ないと思っている。今日は何から話せばいいかな。

まずは、2021年3月期にソニーグループが初の純利益1兆円超えを果たしたことについて、どう感じていますか。

出井氏:どうも思わないね。1兆円という数字に何か意味はあるのかな?

株式市場を含めて、1つの節目と考えている人は多そうです。

出井氏:でも、節目っていつかは訪れるものでしょ。別に1兆円でなくてもいい。今の経営陣は、達成感とか節目とかを感じていないはずだ。おそらく吉田さん(現会長兼社長CEO=最高経営責任者の吉田憲一郎氏)が聞いたら、笑っちゃうんじゃないかな。数字はあくまでも周りが評価することだ。

変革しなければモノ作り企業のままだった

ソニーはかつてのエレクトロニクスの会社から、数字上はエンターテインメントの会社に生まれ変わりました。

出井氏:ソニーが最終的にどういう姿になるのかは分からない。ただ1つ言えるのは、変わり続けるしかないということだ。「非連続の変革」を続けてきたことがソニーという企業の本質だろう。

過去を振り返っても、非連続な変革をしてきたと。

出井氏:そう。でなければ、ソニーはモノ作りの会社で終わっていたはずだ。ソニーのこれまでの成長は、様々な事業の貢献によるものだ。現在は社会が加速度的に変化しているが、ソニーが時代の変化を敏感に捉えてきたのは間違いないだろう。