11月1日、東京の丸ビルに開業した「CRISP STATION」。レジはなく、冷蔵庫からサラダを取り出すだけでよい
11月1日、東京の丸ビルに開業した「CRISP STATION」。レジはなく、冷蔵庫からサラダを取り出すだけでよい

 東京・丸の内。日本有数のビジネス街に、黒い冷蔵庫が現れた。「CRISP STATION(クリスプ・ステーション)」と書かれており、中には8種類のサラダが置かれている。

 販売員はいない。いわゆる無人店舗の一種だが、驚くべきは、冷蔵庫に鍵がかかっていないこと。扉を開け、好きなサラダを手に取り、持ち帰っていい。レジはなく、その場で会計する必要もない。では、どうやって決済するのか。その答えは、冷蔵庫に埋め込まれた小さなディスプレーに書かれている。

 「食べたらパッケージのQRでワンタップ決済」

 サラダのパッケージにQRコードが印刷されており、それをスマートフォンで読み取って、クレジットカードやアップルペイ、グーグルペイで支払う仕組みだ。決済は「食後」でいい。つまり極端な話、ただ食いしても後で追いかけられることはない。

1個1個のパッケージにQRコードが印刷されている
1個1個のパッケージにQRコードが印刷されている
QRコードをスマホで読み取って決済する。2回目以降はカード番号の入力は不要だ
QRコードをスマホで読み取って決済する。2回目以降はカード番号の入力は不要だ

 CRISP STATIONがあるのは、東京駅直結の丸ビル地下1階。弁当店や総菜店、カフェなどが軒を連ねる一角にあり、人通りは多い。しかし、いくら人の目があるとはいえ、サラダを持ち帰られたが最後、きちんと代金が支払われる保証はない。なぜ、こんな思い切った店舗を出したのか。

ランチに並ぶのは「経済損失」

 CRISP STATIONを運営するのは、CRISP(クリスプ、東京・港)という2014年創業のスタートアップである。「CRISP SALAD WORKS(クリスプ・サラダワークス)」というサラダ専門店を、都内に19店舗展開している。

 看板商品は、ベースとなる野菜やトッピング、ドレッシングを自由に選んで組み合わせる「カスタムサラダ」(税込み1092円)だ。1日に必要な野菜は350グラムとされるが、クリスプのサラダは400グラム以上。ヘルシーかつ満腹になれるサラダとして話題を集め、1000円以上の高価格帯ながら、年間延べ70万人以上が利用し、年商は11億円になった。

 実は、この丸ビルのすぐ近くにも「丸の内店」を構えている。歩いて5分とかからない場所に、新たに店を構えたのは「顧客体験を変えたかったから」(宮野浩史社長)だという。

 もともと「後払い」という発想があったわけではない。当初はコンビニエンスストアや食品スーパーなどで見かけるセルフレジ方式を検討していた。来店客がバーコードなどをその場で読み取り、決済するシステムだ。

 しかし、セルフレジを導入すれば来店客の利便性は上がるのか、と宮野氏は考えた。混み合っている時間帯にセルフレジがあれば便利ではあるが、スムーズに会計するには慣れも必要だ。

 「仮に人が並んでいなかったとしたら、店員さんに会計してもらったほうが楽。セルフレジは(人手不足の解消になる点で)圧倒的に事業者都合のサービスと言える。消費者視点で考えれば、その場で払うこと自体が面倒だ」(宮野氏) 

 決済を後回しにすれば、レジ自体が不要になり、会計のために並ぶこともなくなる。「そもそもランチタイムに弁当を持って並ぶだけで5分、10分かかるなんて、すごくナンセンス。忙しく働いている方の大切な時間をそこに費やすのは、とんでもない経済損失だと思った」(宮野氏)

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