とにかく巻き込まれるライブ体験

 世界観のつくり込みとともに力を注いだのは、体験設計である。テレビCMではそれを象徴するフレーズとして「LIVE!西武園ゆうえんち」と訴えた。

 泥棒と巡査が追いかけっこを繰り広げ、そば屋の出前は、肩にうずたかくせいろを積んでアクロバティックな自転車さばきを披露する。どこからともなく紙芝居屋が現れたと思えば、八百屋はジャガイモでジャグリングを始める。商店街全体を舞台に見立て、歩くたびに巻き込まれていく予測不能なライブ体験を展開することで、居合わせたゲスト全員を、傍観者から当事者に引きずり込むのだ。

紙芝居が始まると、たちまち人が集まって来た
紙芝居が始まると、たちまち人が集まって来た
八百屋は、ジャガイモで見事なジャグリングを披露する
八百屋は、ジャガイモで見事なジャグリングを披露する

 「便利な時代に生きているからこそ、アナログでリアルな体験にきゅんとくる。要は、振れ幅なんだと思う。単なる懐かしさだけではない。人と人とのべたべたなコミュニケーションを突き詰め、『全部のエンターテインメントが私に向かっている』という状況があるから心が動き、『エモい』と感じていただける」(久保田氏)

 商店街を通り抜けると、視界が開け、これぞ遊園地という風景が広がる。地上62メートルの大観覧車や回転空中ブランコ、メリーゴーラウンド、タコのゴンドラ……。いずれも昔からあるアトラクションだ。手を加えずに残したのは、既に昭和の世界に身を置くゲストにとって、そのままのほうが親しみを持ってもらえると考えたからである。

タコのゴンドラ「オクトパス・アドベンチャー」は、遊園地の歴史を今に伝えるアトラクションだ
タコのゴンドラ「オクトパス・アドベンチャー」は、遊園地の歴史を今に伝えるアトラクションだ

 さらに道なりに進むと、「レッツゴー!レオランド」という家族向けの新エリアがある。手塚治虫が描いた鉄腕アトムやジャングル大帝のキャラクターを、世界で初めてアトラクション化した。

 ミニジェットコースター「アトムの月面旅行」や、回るコーヒーカップ「レオとライヤのジャングルダンスパーティー」。エリア内を約9分かけてぐるりと1周する「レオとライヤの夕日列車」は、20年に閉園した、としまえん(東京・練馬)にあった模型列車を再利用した。

としまえんの模型列車で園内を巡る「レオとライヤの夕日列車」(©TEZUKA PRODUCTIONS)
としまえんの模型列車で園内を巡る「レオとライヤの夕日列車」(©TEZUKA PRODUCTIONS)

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