ホテル側から眺めたVISON(ヴィソン)。緑を背景に多くの屋根が連なり、まるで1つの村のようだ
ホテル側から眺めたVISON(ヴィソン)。緑を背景に多くの屋根が連なり、まるで1つの村のようだ

 大いなる森に抱かれ、真新しい“村”が姿を現した。商店が連なり、マルシェが開かれ、農園が広がる。道路はぐるりと曲線を描くように延び、山の斜面に沿ってホテルが威容を示す。山頂には温浴施設があり、薬草の湯で日ごろの疲れを洗い流せる。

 敷地面積は、なんと東京ドーム24個分の約119ヘクタール。あの東京ディズニーリゾート(東京ディズニーランド+東京ディズニーシー)よりも広い。構想から足掛け8年。三重県のほぼ中央、人口1万4000人余りの多気町に2021年7月20日、日本最大級の商業リゾート施設「VISON(ヴィソン)」がグランドオープンした。

ヴィソンの全景。敷地面積は約119ヘクタールで、東京ドーム24個分に相当する。開発面積は約54ヘクタール(約54万平方メートル)
ヴィソンの全景。敷地面積は約119ヘクタールで、東京ドーム24個分に相当する。開発面積は約54ヘクタール(約54万平方メートル)

式年遷宮のごとく20年ごとに修繕

 店舗数は73。広大な割には少なく感じるが、ここにヴィソンの商業施設としての特異性がある。

 1店1店がまるで家のような形で、村の中に点在している。そしてその1棟、1棟に地元の木々がふんだんに使われている。これは、既存のショッピングモールへのアンチテーゼでもある。

 「世の中は似たような商業施設が多すぎる。同じような外観、同じような規模で、20年もたてば壊す前提で建てられている。我々はそうではない場所をつくりたかった。商業施設でこれだけ木を使うのは本来、あり得ない。大工さんにメンテナンスをしてもらいながら、20年、40年、80年、100年と長く継続する施設にしたい」

 こう語るのは、ヴィソンを運営するヴィソン多気(三重県多気町)の立花哲也社長だ。20年に1度、新しい社殿を建てる伊勢神宮の式年遷宮のように、20年ごとに木を張り替えながら継続、成長していくという壮大な試みだ。地元の林業を下支えする狙いもある。

 三重県出身の立花氏は12年、同県北西部の菰野町に、一流シェフによる食と温泉を売りにした複合施設「アクアイグニス」を開業した。年間約100万人を集める人気リゾートに育て上げ、21年6月には埼玉県にも進出した(関連記事「イオンも頼る実力、『アクアイグニス』ついに関東進出」)。

 ヴィソンはそのノウハウを注ぎ込んだ集大成となる。ヴィソン多気は、立花氏が代表を務めるアクアイグニス(東京・中央)と、イオンタウン、ロート製薬、ファーストブラザーズの4社が共同出資して設立した。

 イオンタウンが参画しているが、全くイオンタウン的ではない。むしろ正反対である。

「コンビニも自販機もない」

 「コンビニエンスストアはないし、自販機(自動販売機)も置いていない。マクドナルドや、サイゼリヤもない。よくあるナショナルチェーン(全国チェーン)は1軒もない」(立花氏)

 この地で何十年と営業を続けていく。その覚悟に共感してくれる仲間を探した。結果として、都心の百貨店でも見掛けないような、そうそうたる面々が集まった。

 ヴィソンは全部で9つのエリアに分かれている。まず第1期として21年4月29日にオープンしたのは「マルシェ ヴィソン」と「スウィーツ ヴィレッジ」だ。

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