エコロギーの葦苅晟矢代表取締役CEO(最高経営責任者)。カンボジアに移住し、食用コオロギを量産している(写真:竹井俊晴)
エコロギーの葦苅晟矢代表取締役CEO(最高経営責任者)。カンボジアに移住し、食用コオロギを量産している(写真:竹井俊晴)

 すべては、自宅の押し入れから始まった。

 「衣装ケースに放った数匹のコオロギが、気づいたら1000匹ぐらいになっちゃいまして」

 昆虫好きでもなかった青年が目を見張ったのは、コオロギの驚異的な繁殖力。

 「飼育の自由度の高さ、容易さを実感して、学生なりに思ったんですよ。『これは、食糧資源になる』と。コオロギが増えすぎて、自宅環境としては危うくなったんですけどね」

 人生の転換点となった出来事を、笑いながら振り返るのは、葦苅晟矢(あしかり・せいや)氏。コオロギを育て、食品原料や飼料として販売する「コオロギメーカー」エコロギー(東京・新宿)を率いるCEO(最高経営責任者)だ。

ビーフジャーキーより高たんぱく

 エコロギーは、育てたコオロギを全粉砕してパウダー化。この「エコロギーパウダー」が、さまざまな食品に化ける。現在、試作中なのは、パウダーをふんだんにまぶした豆菓子である。春日井製菓(名古屋市)と共同開発し、商品化に向けて動いている。

エコロギーが春日井製菓と試作したコオロギ味の豆菓子(写真:竹井俊晴)
エコロギーが春日井製菓と試作したコオロギ味の豆菓子(写真:竹井俊晴)

 「抵抗がなければ、ぜひ!」(葦苅氏)

 勧められるがまま、パッケージを開け、豆菓子を1つ手に取った。恐る恐る口に運ぶと、強烈なうま味が舌先に広がる。それもそのはず。コオロギには、エビやカニなどの甲殻類に似た成分が含まれているからだ。

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