コロナ禍の今、スポットライトを浴びている光技術がある。深紫外線LED(発光ダイオード)だ。

 深紫外線とは、紫外線の中でも280ナノメートル(ナノは10億分の1)以下の短い波長の光のこと。太陽光には含まれているが、オゾン層で吸収されるため、地表には届かない。そんな、我々の目には見えず、生活空間にも存在しない光をLEDで作り出し、殺菌や空気の浄化に応用した製品が次々と出荷されている。

8畳の空間を除菌、消臭する「エアロピュア シリーズS」。深紫外線LEDを搭載し、新型コロナウイルスも不活性化する

 幅18.7センチメートル(cm)、奥行き12.9cm、高さ26.8cm、重さ約1.4キログラム。机の上に置けるほどコンパクトでありながら、8畳分の空間を除菌、消臭できる日機装の「エアロピュア シリーズS」。参考価格7万400円(税込み)の製品が2021年6月、ドラッグストアのウエルシア薬局、スギ薬局の店頭に並び始めた。それぞれ全国でまだ10店舗ずつと少ないが、徐々に販売店舗を増やしていく計画だ。

 エアロピュアのシリーズSは、隠れたヒット商品である。日機装は20年1月に業務用として発売し、たちまち年間6万台弱を販売。21年3月末時点で全国8500以上の医療関連施設が導入し、旅館やホテル、シェアオフィスなどにも販路が拡大した。

 積み上がった受注残を解消すべく、21年は年間25万台まで生産体制を増強した。今回、実店舗での販売を始めたのは、一般客からも「店頭で実物を見たい、買いたい」という声が多く寄せられたからだという。

 25万台をすべて売り切れば、単純計算で約175億円の売り上げとなる。これだけ引き合いがあるのは「新型コロナウイルスにも効果がある」という実験結果を早々に開示したのも大きい。

 深紫外線LEDを新型コロナウイルスに照射したらどうなるか。20年5月、日機装は宮崎大学との共同実験で、1秒間で87.4%、10秒間で99.9%のウイルスが減少することを確認した。21年4月にも宮崎大学と共同で同様の照射実験を行い、英国、ブラジル由来の新型コロナウイルス変異株でも、1秒間で90%以上、5秒間で99%以上のウイルスが不活化されたと発表した。

 もともと深紫外線には、菌やウイルス内の核酸(DNAやRNA)にダメージを与え、増殖を抑制する効果があると考えられていた。日機装は、深紫外線LEDの技術を活用し、空間の除菌、消臭に特化した製品としてエアロピュアを売り出した。

続きを読む 2/4 15年前から研究、コロナ直前に「たまたま発売」

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