
アプリにメッセージが届き、開封すると「既読」がつく。返信しなければ「既読スルー」だ。スルーすべきか、こちらからさらにメッセージを送るべきか――。
この悩ましい「既読スルー」問題に、一石を投じたアプリがある。写真や短い動画を友達同士でシェアできる「Snapchat(スナップチャット)」だ。送られた写真や動画は、開くとすぐ自動的に消える。
月間利用者数は世界で約6億人。このうち毎日利用しているユーザーは3億2000万人を超える。特に欧米の若者の間で絶大な人気を誇り、米国や英国、フランス、オランダ、オーストラリアではZ世代(13~24歳)の9割が愛用。1日に平均30回もアプリを開いているというデータがある。
すぐに消える「ソーシャル疲れの処方箋」
そのスナップチャットを運営する米スナップがこの春、初めて日本にオフィスを構えた。2022年3月29日、竹下通りを一望できる東京・原宿の高層ビルで業務をスタート。フェイスブックジャパン出身の長谷川倫也氏をトップに迎え、いよいよ日本市場の開拓に乗り出した。
スナップチャットとは何者か。長谷川氏は「ソーシャル疲れに対する処方箋だ」と表現する。
「写真も動画も確認したらすぐ消えるから返信のプレッシャーがない。『ああ、既読つけちゃった、すぐ返信しなきゃ』『既読をつけないようにチラ見しよう』と頑張る必要はない。スナップチャットは、基本的に既読スルーが前提なので、送りっぱなしでいい。だからこそ、ありのままの自分をさらけ出せる」(長谷川氏)という。

記録に残らないからこそ、くだらない日常の一瞬を切り取って共有できる。まさに普段の会話と同じ感覚で、その場限りのやり取りを楽しめるのが特徴だ。
スナップチャットは起動すると、カメラが立ち上がり、「レンズ」と呼ばれるさまざまなフィルターを選ぶことで、撮影した自分の顔を自在に加工できる。動物やアニメキャラクターに変身したり、目を巨大化して口から虹を出したり。女性が男性に、男性が女性になる性転換もできるし、肌を若返らせたり、老化させたりもできる。

ともすれば「変顔面白アプリ」と捉えられがちだが、そうではない。こうした加工を駆使することで、今この瞬間に抱いた気持ちを、楽しくビジュアルにのせて表現できる。「この写真だったら、あの人とこの人に送ろう」といったように、シェアしたい人だけに送信できるのも、他のSNS(交流サイト)との違いだ。
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り2154文字 / 全文3182文字
-
【締切迫る!】日経電子版セット2カ月無料
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
【初割・2カ月無料】有料会員の全サービス使い放題…
特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題
ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題
日経ビジネス最新号、11年分のバックナンバーが読み放題
この記事はシリーズ「酒井大輔のトレンドストーリー」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?