デジタルトランスフォーメーション(DX)は、顧客中心主義が生命線です。しかし、アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス氏が指摘するように、人間の欲望はエンドレスで先鋭化していくものであり、そのため人間の欲望を満たそうとする顧客中心主義には果てがありません。では、DXで勝利するために大切なことは何でしょうか。DXの勝者はこれから何処(いずこ)を目指すのでしょうか。米国のテスラ、アップル、セールスフォース・ドットコム、ウォルマート、マイクロソフト、ペロトン・インタラクティブ、アマゾン、シンガポールのDBS銀行という注目8社のグランドデザインを解説した『世界最先端8社の大戦略 「デジタル×グリーン×エクイティ」の時代』(田中道昭著、日経BP)の一部を抜粋・再構成して、戦略的思考法を解説します。第2回は「理想の世界観」実現ワークシートについて。

すべての起点は顧客中心主義にあり

 前回は、「日本企業のための大胆なデジタルシフト戦略策定ワークショップ」で私が提唱している「ベゾス思考」を紹介しましたが、今回は同ワークショップで利用しているフレームワークの1つを紹介します。それは「理想の世界観」実現ワークシートです。このワークシートは、DX戦略の分析や立案のために活用してもらうものです。

(出典:『世界最先端8社の大戦略 「デジタル×グリーン×エクイティ」の時代』325ページ)

 DXの本質はトランスフォーメーションであり、特にカスタマーエクスペリエンスを高めていくことにあります。また、次回に述べるように「デジタル×グリーン×エクイティ」の時代を迎え、人間中心主義や「人×地球環境」中心主義が問われていますが、民間企業が事業を営む以上は、すべての起点は顧客中心主義にあります。その視点から、自社の事業をとらえ直す際にも、このワークシートは使えます。

マーケティングの4Pを顧客基点の「4C」として再定義

 「理想の世界観」実現ワークシートは、「現状の課題」と「理想の世界観」の対比、そして「4P」と「4C」の対比の2つで構成されています。「現状の課題」をどう克服して「理想の世界観」に至るのか。そのために現状の4Pをどのように4Cへと読み替えるべきなのか。そのような構成となっています。

 その中核となるのが、マーケティングのフレームワークの1つである4Pです。4Pとは、プロダクト(製品)、プライス(価格)、プレイス(流通)、プロモーション(販売促進)のことです。米ハーバード・ビジネス・スクールのニール・H・ボーデン教授が、1964年の論文で提唱したもので、4Pはそれぞれ、「何を売るか」「いくらで売るか」「どこで売るか」「どうやって知ってもらうか」を指しています。

 4Pの各要素は独立したものではありません。マーケティングの世界では4Pのことをマーケティングミックスとも呼び、マーケティングプランを考える際には4つのPを「最適な形に組み合わせて」「同時並行」で進めるのが常です。

 4Pは、企業経営におけるマーケティング戦術の基本となるものです。しかし一方で、4Pは商品・サービスを提供する側の視点に立った考え方でもあり、顧客中心の商品・サービスが求められる時代の流れの中では、そぐわない部分も一部出てきています。

 そこで4Pと同時に考えたいのが4Cです。4Cは、4Pを顧客視点から再定義するためのフレームワークです。4Pのプロダクトに対してカスタマーバリュー(顧客価値)を、プライスに対してカスタマーコスト(顧客の生涯コスト)を、プライスに対してコンビニエンス(利便性)を、プロモーションに対してコミュニケーションを検討します。このように、4Pそれぞれを、顧客起点に捉え直すことで、「デジタルトランスフォーメーションによって何を変革すべきか」の手掛かりが見えてきます。

続きを読む 2/3 「DXを果たしたコンビニ」としてのアマゾン・ゴー

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