規模は数分の一だが収益性や時価総額はメガバンクを超える

 このベゾス思考によってDXを推進し、「世界一のデジタル銀行」と呼ばれるまでの大変身を遂げた銀行があります。シンガポールのDBS銀行です。

 シンガポール政府系の開発銀行として設立されたDBS銀行は、東南アジア最大の事業規模を誇る商業銀行であり、リテールバンキングやコーポレートバンキング、プライベートバンキング、証券仲介、保険など金融サービス全般を主事業とします。

 事業規模だけ見るなら、総資産、従業員数などは米欧日のグローバル金融機関には遠く及びません。DBS銀行の「強さ」は、米銀や日本のメガバンクと財務内容を比べたときに明らかとなります。以下のグラフは、DBS銀行の持ち株会社DBS Group Holdings Ltd.と米欧日の名だたる8行――JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、CITI、ゴールドマン・サックス、HSBC、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、SMBCグループ、みずほフィナンシャルグループ(FG)の比較です。

(出典:『世界最先端8社の大戦略 「デジタル×グリーン×エクイティ」の時代』199、201ページ)
(出典:『世界最先端8社の大戦略 「デジタル×グリーン×エクイティ」の時代』199、201ページ)

 このようにDBS銀行は、事業規模は小さいながらも、収益性や資本効率などを示す指標ではトップクラスの高い競争力を誇ります。時価総額を見ても、みずほFGやSMBCグループを上回りました。そんなDBS銀行の強さの秘密が、ほかならぬDXです。

 金融専門情報誌『ユーロマネー』はDBS銀行に対して、「ワールド・ベスト・デジタルバンク」の称号を2016年と18年に、そして19年にはデジタルの枠を超えて「ワールド・ベストバンク」、20年には「アジア・ベスト・バンク・2020」の称号を与えています。

 『ユーロマネー』の「ワールド・ベストバンク・2019」を受賞した際、ピユシュ・グプタ最高経営責任者(CEO)は、次のようなコメントを残しています。

 「私たちは『ほかの銀行が何をするのか?』という考え方から離れなければなりませんでした。代わって、私たちが考え始めたのは『メガテック企業は何をするのか?』ということでした」

次ページ アリババやテンセントと戦うために「自らを破壊」