実はフラットではない大屋根

 連載第1回でも書いたが、屋根の架構は一見、木造に見えるものの、木はサポート的な役割で、主構造は鉄骨造だ。

南側のガラス屋根の部分を見上げる(写真:宮沢 洋)
南側のガラス屋根の部分を見上げる(写真:宮沢 洋)
上から見下ろすと、南側のこの部分(イラスト:宮沢 洋)
上から見下ろすと、南側のこの部分(イラスト:宮沢 洋)

 なぜここだけガラスなのかというと、天然芝に太陽光が当たりやすくするためだ。コンピューターのシミュレーションで範囲を決めた。

ガラス屋根と金属屋根の境目を見上げる(写真:宮沢 洋)
ガラス屋根と金属屋根の境目を見上げる(写真:宮沢 洋)

 もう一度、屋根の全体の形を見てみよう。長辺方向の真ん中あたりが少し膨らんでいるのが分かるだろうか。

南側客席から東側の屋根の先端部を見る(写真:宮沢 洋)
南側客席から東側の屋根の先端部を見る(写真:宮沢 洋)

 上空からの撮影ではフラットに見える屋根だが、実は長辺方向の真ん中あたりが、少し持ち上がっている。これは構造の強度を高めるためで、建築用語ではこういう形を「むくり」と呼ぶ。むくりは、日本の伝統建築でもよく見られる形だ。

「むくり」と「そり」を知っておこう(イラスト:宮沢 洋)
「むくり」と「そり」を知っておこう(イラスト:宮沢 洋)

 スタンド内は、冷房はできないが、巨大な送風設備がある。

1階と3階のコンコースには、観客席に向かって風を送る「気流創出ファン」を計185台設置した(写真:宮沢 洋)
1階と3階のコンコースには、観客席に向かって風を送る「気流創出ファン」を計185台設置した(写真:宮沢 洋)

スタンドの外周にも見どころ多し

 競技の前に、建物内を散策しておこう。まずはトイレ。「少ない」との声が多数なので、早めに済ませておこう。

男性トイレ。全体では、男子小・大便器は1027基、女子大便器は933基、アクセシブルトイレ(主にLGBT、車いす、障害者用)が93カ所に設置されている(写真:宮沢 洋)
男性トイレ。全体では、男子小・大便器は1027基、女子大便器は933基、アクセシブルトイレ(主にLGBT、車いす、障害者用)が93カ所に設置されている(写真:宮沢 洋)

 話の種に、ほかのフロアのコンコースも見ておきたい。どの階も階段で行ける。

コンコースにある階段(写真:宮沢 洋)
コンコースにある階段(写真:宮沢 洋)
こんな断面構成(イラスト:宮沢 洋)
こんな断面構成(イラスト:宮沢 洋)
3階の「風のテラス」。LED照明は蛍の光の軌跡をイメージしたもの(写真:宮沢 洋)
3階の「風のテラス」。LED照明は蛍の光の軌跡をイメージしたもの(写真:宮沢 洋)
枯れ山水をイメージした「風の庭」。庵治(あじ)石を敷いた(写真:宮沢 洋)
枯れ山水をイメージした「風の庭」。庵治(あじ)石を敷いた(写真:宮沢 洋)

 5階のテラス「空の杜(もり)」へ。

「空の杜」の西側からは、東京体育館がよく見える。東京体育館も五輪会場の1つ(写真:宮沢 洋)
「空の杜」の西側からは、東京体育館がよく見える。東京体育館も五輪会場の1つ(写真:宮沢 洋)
白い円柱が斜めに立つ。柱は鉄骨鉄筋コンクリート造(写真:宮沢 洋)
白い円柱が斜めに立つ。柱は鉄骨鉄筋コンクリート造(写真:宮沢 洋)
斜め柱の足元に木のベンチ。形がかわいい(写真:宮沢 洋)
斜め柱の足元に木のベンチ。形がかわいい(写真:宮沢 洋)
最上部の庇を見上げる。この庇のルーバーは、高い位置にあってメンテナンスが難しいため、本物の木材ではなく、木に見えるプリントを使っている(写真:宮沢 洋)
最上部の庇を見上げる。この庇のルーバーは、高い位置にあってメンテナンスが難しいため、本物の木材ではなく、木に見えるプリントを使っている(写真:宮沢 洋)

 外周には植栽スペースがぐるりと巡る。

斜め柱の足元の植栽升(写真:宮沢 洋)
斜め柱の足元の植栽升(写真:宮沢 洋)

 内覧会から1年半がたち、植栽もかなり育った。

2021年7月の植栽の状況(写真:宮沢 洋)
2021年7月の植栽の状況(写真:宮沢 洋)

 いずれは建物全体がこんなふうになるだろうか。

下の絵は隈氏のイメージではなく、私の単なる妄想です(イラスト:宮沢 洋)
下の絵は隈氏のイメージではなく、私の単なる妄想です(イラスト:宮沢 洋)

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