満席に見える客席は大発明?

 スタンドに足を踏み入れると、こんな光景が広がる。想像していたよりも、屋根の張り出しが大きい。

南側から見たスタンドの全景(写真:宮沢 洋)
南側から見たスタンドの全景(写真:宮沢 洋)
スタンドは3層構成。この写真は南側の3層目から西側を見たもの(写真:宮沢 洋)
スタンドは3層構成。この写真は南側の3層目から西側を見たもの(写真:宮沢 洋)
同じく東側を見る。大屋根のガラス部分から光が落ちる(写真:宮沢 洋)
同じく東側を見る。大屋根のガラス部分から光が落ちる(写真:宮沢 洋)

 客席は、確かに「満席」に見える。これは5色の椅子を、コンピューターでシミュレーションして、自然なまだら模様になるように配置したもの。公式には「木漏れ日」のイメージだ。だが、本当の狙いが、「空席が目立ちにくいようにするため」であることは明らかで、隈氏もインタビューでそう答えている。

1層目の客席から2層目、3層目を見上げる。確かに満席に見える(写真:宮沢 洋)
1層目の客席から2層目、3層目を見上げる。確かに満席に見える(写真:宮沢 洋)
椅子はアースカラーを中心にした5色。隈氏らしい「コスパの高い」デザインといえるだろう(写真:宮沢 洋)
椅子はアースカラーを中心にした5色。隈氏らしい「コスパの高い」デザインといえるだろう(写真:宮沢 洋)

 ただ、この「単色ではない客席」は、隈氏らの発明というわけではない。ヨーロッパのスタジアムには先行事例がある。

 筆者の知るところでは、例えば、ポーランドの「ワルシャワ国立競技場」(2012年完成)は、客席の椅子が赤と白の2色でランダムに塗り分けられ、熱狂的なファンで埋め尽くされているように見えることで有名だ。この施設はドイツの設計事務所、GMP(ゲルカン・マルグ・アンド・パートナーズ)の設計。同じくGMPが参画したルーマニア、ブカレストの「ナショナル アリーナ(アレーナ・ナツィオナラ)」(2011年)では、さまざまな原色をランダムに並べている。

満席に見える客席は、隈氏らの発明ではない(イラスト:宮沢 洋)
満席に見える客席は、隈氏らの発明ではない(イラスト:宮沢 洋)

 これをまねだとか言ってはいけない。世界の建築を知り、良いものは迷わず採り入れようという姿勢がこのコロナ禍で吉と出たわけで、それは大いに評価すべきではないか。

客席の色ばかりが話題になっているが、車椅子用の席もある。同伴者が座る椅子席も隣に。車椅子用の客席は約500席(写真:宮沢 洋)
客席の色ばかりが話題になっているが、車椅子用の席もある。同伴者が座る椅子席も隣に。車椅子用の客席は約500席(写真:宮沢 洋)
フィールドのそばには、五輪用の仮設席もつくられていた(写真:宮沢 洋)
フィールドのそばには、五輪用の仮設席もつくられていた(写真:宮沢 洋)

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