満席に見える客席は大発明?
スタンドに足を踏み入れると、こんな光景が広がる。想像していたよりも、屋根の張り出しが大きい。



客席は、確かに「満席」に見える。これは5色の椅子を、コンピューターでシミュレーションして、自然なまだら模様になるように配置したもの。公式には「木漏れ日」のイメージだ。だが、本当の狙いが、「空席が目立ちにくいようにするため」であることは明らかで、隈氏もインタビューでそう答えている。


ただ、この「単色ではない客席」は、隈氏らの発明というわけではない。ヨーロッパのスタジアムには先行事例がある。
筆者の知るところでは、例えば、ポーランドの「ワルシャワ国立競技場」(2012年完成)は、客席の椅子が赤と白の2色でランダムに塗り分けられ、熱狂的なファンで埋め尽くされているように見えることで有名だ。この施設はドイツの設計事務所、GMP(ゲルカン・マルグ・アンド・パートナーズ)の設計。同じくGMPが参画したルーマニア、ブカレストの「ナショナル アリーナ(アレーナ・ナツィオナラ)」(2011年)では、さまざまな原色をランダムに並べている。

これをまねだとか言ってはいけない。世界の建築を知り、良いものは迷わず採り入れようという姿勢がこのコロナ禍で吉と出たわけで、それは大いに評価すべきではないか。


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