五輪は「スポーツの祭典」であると同時に「建築の祭典」でもある──。2013年9月にオリンピック・パラリンピックの東京開催が決まったときには、そんな書き出しで熱い開幕リポートが書けると信じていた。過去を振り返れば、五輪によって歴史に刻まれた名建築は実に多いからだ。

開閉会式の会場となる国立競技場。これはこれで建築の歴史に残るのか? 2019年12月の報道内覧会で撮影(写真:宮沢洋)

 東京五輪の本番が近づいている。しかし、今回の五輪では選手団も報道陣も行動範囲を厳しく制限され、とても「空間を楽しむ」余裕はなさそうだ。会場施設の「建築としての魅力」が報道を通じて伝えられる可能性は低い。それでも、競技中継では会場が映る。映れば気になる。この連載では、今回の東京五輪で特に注目してほしい競技施設とその見どころ、前東京五輪との比較などを4回にわたって書きたい。

 筆者は、文系出身の元建築雑誌記者(記者歴30年)で、現在は「画文家」という肩書きで活動している。この5月には『隈研吾建築図鑑』というイラスト図解本を出版した。なので、この連載もイラスト交じりで進める。

 初回は、飛ぶ鳥を落とす勢いの建築家・隈研吾氏(1954年生まれ)が設計の中心になった「国立競技場」(東京都新宿区霞ヶ丘町10-1)だ。開会式・閉会式がここで行われるので、ほぼ全国民が映像で目にすることだろう。

国立競技場を間近で見た筆者の感想は、「木目が見える!」(イラスト:宮沢洋、書籍『隈研吾建築図鑑』から引用)

 筆者は2019年12月に行われた報道陣向け内覧会でこの施設をじっくり見た。上のイラストが敷地内に入ったときの第一印象だ。「おおっ、木目が見える!」

 建物全体が木材のルーバー(細長い材料を隙間を空けて並べたもの)で覆われている。そういうデザインであることは、この案が選ばれたときから知っていた。だが、筆者は、施設の巨大さから考えて、「人間が見て木の板だと分かるのか?」「金属か陶板に見えるのでは?」と心配していた。実際に建物に近づくと、木目が見える。誰が見てもこれは木だ。

スタンドへの入り口。天井にも木のルーバー。2019年12月撮影(写真:宮沢洋)
続きを読む 2/4 完成後にネガティブな意見が続々

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