バイデン政権が誕生して間もなく5カ月となる。初の施政方針演説は蜜月と呼ばれる100日を翌日に控えた4月28日と異例の遅さだった。ただ、1月20日の就任前に出した1兆9000億円の米国救済計画を3月10日に成立させるなど、この間に積極的な政策を提案してきた。

バイデン大統領は4月28日、両院合同会議で演説した(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
バイデン大統領は4月28日、両院合同会議で演説した(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 一方、議会共和党は5月27日、5680億ドルとしていたインフラ関連の財政支出計画を、バイデン政権が2兆3000億円から1兆7000億ドルへ引き下げた妥協案に対抗して、9280億ドル強に引き上げると発表した。既に来年の中間選挙に向けた駆け引きが始まっているのだ。

 こうした中、日本の2021年第1四半期のGDP(前期比)が年率換算で-5.1%だったのに対して、米国は+6.4%と正反対の結果となり、コロナ禍からの脱出に向けて両国経済の明暗が分かれた。しかも、バイデン大統領は、2021年度予算を戦後最大でGDPの33%(コロナ前は20%程度)となる6兆ドルに増やすことを提案した。彼のプランでは2022年度も6兆ドルとする予定である。

 トランプ政権時代からのコロナ禍対応の財政出動は、昨年3月18日の2000億ドル、同27日の2兆2000億ドル、4月24日の5000億ドル、12月27日の9000億ドルに、バイデン政権の米国救済計画の1兆9000億ドルが上乗せされて合計5兆7000億ドルとなった。

 バイデン大統領は選挙公約を守るべく、3月31日に米国雇用計画として2兆3000億ドル、4月28日には米国家族計画として1兆8000億ドルの経済政策を発表している。この2つは、前者が向こう8年間、後者が向こう10年間の合計額としているものの、6兆ドルの年度予算とともに大規模な内容であることに間違いはない。

 これに対して、サマーズ元財務長官は、実質的に新年度に影響する12月の9000億ドルと3月の1兆9000億ドルの計2兆8000億ドルは、米国GDPの13%に当たる過大なもので、過去に経験のないインフレのリスクがあると批判した。民間エコノミストのインフレ予想は4~7%である。また、FRBが2023年までゼロ金利政策を続ける見通しを出したことに対して、「危険な自己満足」と切って捨てた。この背景には、個人貯蓄が2019年の1兆2000億ドルから2兆8000億ドルと倍以上に増えているほか、GDPギャップも1兆9000億ドルの財政出動の前後でマイナス3%からプラス0.3%に転じたこともある。加えて、マネーサプライのM2(現預金)+CDは昨年3月と比べて30%増えている。

 実際、5月31日に発表されたメモリアルデーの旅行予定人数(AAA調べ)が、昨年の2300万人(前年比46%減)から3700万人に急増したほか、バーベキュー関連食品の価格も例えばUSDA Choice Beefが+9%など上昇している。また、S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数(全米)は2月に前年同月比12%上昇した後、3月も同13.2%上昇となり、上昇率は約15年ぶりの大きさとなった。

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