省庁間、中央と地方の調整が効果

 死者数の少ない「成功国」と死者数の多く出た「失敗国」の最初の1年間を比べると、上記の対コロナ戦略の違いに加えて、リーダーシップのスタンスやアプローチの違いがはっきりと見えてきた。

 うまく対応している国々は、省庁間や中央政府と地方政府の関係を効果的に調整し、政府全体としての対策を機能させていた。また高リスク地域やグループにおけるコミュニティーのリーダーとの協力や、民間企業との連携を効果的に行い、リーダーによる国民の感情に寄り添ったコミュニケーションを戦略的に実施していた。

 それに対して、多くの死者を出した国々では、感染の広がりを検知し迅速な対応を取る緊急システムへの投資や準備をしていない。またリーダーがコロナの脅威や包括的な公衆衛生上の対策の意義を否定し、感染経路を遮断するための一貫した戦略を作り実行することに責任を負わなかった。

 感染対策も遅れ、新しい科学的エビデンスに沿った対策の変更も遅れ、科学的エビデンスに懐疑的なリーダーの姿勢が、国のコロナ対策に対する国民の信頼を損ねることにもつながった。

日本は平時ルール書き換えのシステムを

 独立パネルが行った28カ国の比較分析においては、日本は中間の14カ国のうちの1つに分類されていた。日本国内でされている分析に比較してパネルが深い分析を行ったわけではないが、「成功国」と「失敗国」の比較内容に照らして日本の対応を考えることは、非常に意義があると個人的には思う。

 緊急事態宣言と解除を繰り返す日本の「抑制戦略」は、結果的に経済を助けることになっているのか。また日本の対応の背景には、省庁間の縦割りや中央政府と県や市町村との役割分担や連携の不足、平時の法制度の制約による通関でのコントロールの難しさがある。平時のルールを書き換える緊急対応のシステムが存在していないことが、根本にある問題の1つといわれている。

 コロナ対策の渦中にある今のうちに、パンデミックおよびより広い緊急事態に対する、国家全体、社会全体としての緊急対応システムと制度を構築することは、急務と言える。

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