感染の封じ込めを徹底した国が成果
各国の対応は、一見すると類似しているように見えた。いずれの国も、大統領や首相直結のタスクフォースを設け、専門家のアドバイザーグループを立ち上げ、手洗いやマスク、フィジカルディスタンスの確保、ロックダウンなどの公衆衛生上の対策、検疫や入国制限などの渡航措置を打ち出した。しかし、その背後に流れる戦略には、大きな違いがあった。
レビューした28カ国の戦略は、「徹底的な封じ込め戦略」「抑制戦略」「緩和戦略」、そして「戦略不明瞭」の4つに分けることができた。「徹底的な封じ込め戦略」は、「感染ゼロ」を明確に目指してアグレッシブな対策を講じる、中国、ニュージーランド、シンガポール、韓国、タイ、台湾などのアジア太平洋の多くの国や地域が採用した戦略だった。

それらの国や地域は、科学的なアドバイスに沿ってトップダウン型の意思決定を素早く行い、国境の厳しい管理と検疫、感染者と接触者の徹底隔離と高リスクグループの定期的なスクリーニングなどをアグレッシブに行いながら、同時に厳しい公衆衛生上の対策による社会への負の影響を緩和する措置を取っていた。
それに対し、大部分の国は「抑制戦略」を策定した。それらの国々は、自国に感染が広がるまで対策を開始せず、ロックダウンなどの厳しい公衆衛生上の対策は取るものの、感染がなくなる前に、感染が減り始めた時点で緩和あるいは解除を繰り返した。
スウェーデンや英国などの初期の戦略は、保健医療システムが崩壊しない範囲で低リスクグループによる感染を容認しつつ、最終的には多くの国民の集団免疫獲得を目指す、「緩和戦略」と呼べるものだった。これは経済および社会の活動をなるべく妨げないように配慮したもので、公衆衛生上の厳しい対策をあえて取らない形を取った。この戦略は感染の急激な拡大を引き起こし、両国とも「抑制戦略」へのシフトを余儀なくされた。
最後に、ブラジル、メキシコ、そしてトランプ政権下の米国などは、地方分権が進んでいる状況にあって中央政府が明確なコロナ対策の戦略を打ち出さなかった。結果として地方政府がそれぞれの考えの下に対策を取った。この一貫しないアプローチは、非常に大きな感染拡大を引き起こすことになった。
以上のような戦略とその結果の違いを考えると、新型コロナにおいては、徹底的な封じ込めを行っている国が、感染をうまくコントロールしていることが分かる。厳しい感染のコントロールによって経済活動が犠牲になるという懸念があるが、実はコロナ感染による死者数を低く抑えている国の方が、前年比GDPの減退を小さく抑えている。コロナ感染をゼロに近いところで抑えているため、経済活動を通常に近い形に保てているのだ。
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