人々の人生を脅かし続ける新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)。私はこの新型コロナを人類が経験する最後のパンデミックにするための提言を行う、コロナ対応検証の独立パネルに約半年の間参画した。独立パネルの提言は5月12日に公開され(https://theindependentpanel.org/mainreport/)、その実現に向けて各国政府との議論が始まっている。この連載では5回にわたり、独立パネルでの経験や学び、提言の内容を、日本についての学びや、日本人として国際システムの改革に関わることへの思いも含めて共有したい。記事は個人としての見解であり、現在所属するビル&メリンダ・ゲイツ財団とは関係ないことを申し上げておきたい。
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2019年12月に中国で広がり、世界に飛び火した新型コロナウイルスのインパクトは、国によって大きく異なるものとなった。
2021年5月24日時点での新型コロナウイルス感染症による100万人当たりの累計の死者数は、ブラジルやメキシコ、ペルー、米国、英国などでは2000人前後に上る。それに対して、中国、ベトナム、ニュージーランド、シンガポールなどでは、たった3~5人にすぎない。2020年第2四半期時点での国民総生産(GDP)は前年比で、死者数の多いペルー、英国、メキシコなどではマイナス20~30%なのに対し、中国はプラス3.2%を記録し、韓国はマイナス3%にとどまっている。なお、日本の累計死者数は100万人当たり98人で、GDPはマイナス10%だった。
感染症対策の関係者が驚いたのは、各国の富が対策の成否を分けたわけではなかったことだ。逆に、米国、英国、欧州の各国など、裕福な国が感染のコントロールに失敗し、壊滅的な打撃を受けた。これらの国々は、コロナ前の感染症への準備レベルを測る指標でトップに位置しており、米国は1位だった。これまでの技術的な観点に基づいた指標は、各国のコロナ対応のパフォーマンスを予見するものとして、全く役に立たなかった。
では、各国のコロナ対応の成否を分けたものは何なのか。今後経験し得る新型コロナ並み、あるいはそれ以上の感染力や致死率を持つ感染症が、今回のような未曽有の危機を引き起こすのを防ぐため、世界各国がすべきことは何なのか。
それに答えるために、独立パネルでは、人口10万人に対する新型コロナ死亡者の数(2020年11月6日時点)が最も少ない7カ国、最も多い7カ国、そしてその間に位置する14カ国の合計28カ国の、最初の1年間の新型コロナ対応を比較分析した。
そこから見えてきたのは、一見同じような対応をしているように見える各国の、根底に流れる戦略やスタンス、リーダーシップの大きな違いだった。
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