東京都などとともに東京五輪・パラリンピックを支えているのは協賛金を出している企業だ。平時なら宣伝効果が期待できたが、コロナ禍で「利権集団扱い」に一変してしまった。前例のない大会は、国だけでなく企業にとっても大きな「賭け」となっている。
1都3県で無観客となった東京五輪。それでも羽田空港や成田空港には海外の選手団が続々と入国している。選手らは空港到着から、合宿地や競技場への移動などで行動範囲を限定し、外部と接触を絶つ「バブル方式」で行動する。ホストタウンとなる地方自治体や宿泊施設、交通機関などの関係者は感染症対策に奔走する。そんな前例なき五輪を支える集団に、大会オフィシャルパートナーである旅行会社JTBの社員が最大1000人も参加することは、あまり知られていない。
数十カ所の市町村で、ホテルと各国オリンピック委員会や選手チームとの間に入って調整し、宿泊や移動で選手を管理するノウハウを伝授する。ホストタウンが受け入れを断念すれば、代替自治体探しも請け負った。羽田空港からの選手団の移動も手掛ける。「二重三重の厳格な管理をしなければならない。コロナ前に想定した何倍ものパワーをかけている」。JTBのオリンピック・パラリンピック推進担当の大塚雅樹取締役はバブル死守に必死だ。
コロナ禍前に描いていた五輪インバウンド特需の夢は砕け散った。JTBは、海外観光客向けの宿泊付き観戦ツアーや大会関係者の宿泊業務などで大きな収益効果が見込めるはずだったが、3月に海外無観客が決まり、規模縮小に伴い大会関係者も大幅に減る。

「もうコンペする時間がない。感染症対策にご協力いただきたい」。五輪開催準備が加速した今春、組織委員会から打診された。事業で培ったイベントの安全運営技術を生かせると引き受けた。競技場周辺での動線、測定や消毒の手順、要員配置などの設計を支援した。
「確かにビジネスチャンスはがたっと落ちたが、ホスピタリティー会社として感染対策で貢献できる。1964年の東京五輪は社会インフラがレガシーとなったが、東京五輪の最大のレガシーは感染対策となった。そう後世に語り継がれるようにしたい」。大塚取締役はこう前を向く。
最上位スポンサーは1000億円規模に
開催都市の重い財政負担から下火になった五輪は84年のロサンゼルス大会から民間資本の導入に大きくかじを切った。放映権料とスポンサーからの協賛金によって大会運営が成り立つようになり、巨大スポーツビジネスイベントへと変貌を遂げた。
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