コロナ禍が一向に収束の気配を見せない中、東京都では4度目の緊急事態宣言が発令された。東京五輪・パラリンピックの開催まで2週間を切る中、東京都など1都3県では無観客で開催することを決めた。米アンダーアーマーの日本総代理店「ドーム」の最高経営責任者(CEO)で、スポーツ庁の委員を務めた経験を持つ安田秀一氏は「五輪は残念な大会になる」と警鐘を鳴らす。また、「五輪は都市が開催するイベントだ。東京都知事が主導的に『やめます』と言えば中止することができた」とその責任の所在を明言する。

<span class="fontBold">安田秀一(やすだ・しゅういち)氏</span><br> ドーム取締役会長、代表取締役、CEO。1969年東京生まれ。92年法政大文学部卒、三菱商事に入社。96年退社し、ドーム創業。98年に米アンダーアーマーと日本での総代理店契約を結んだ。アメリカンフットボールは法政二高時代から始め、大学時代は大学全日本選抜チームの主将も経験。2016年から18年春まで法政大アメフト部の監督(後に総監督)。スポーツ庁の「日本版NCAA創設に向けた学産官連携協議会」の委員を務めた(写真提供:ドーム)
安田秀一(やすだ・しゅういち)氏
ドーム取締役会長、代表取締役、CEO。1969年東京生まれ。92年法政大文学部卒、三菱商事に入社。96年退社し、ドーム創業。98年に米アンダーアーマーと日本での総代理店契約を結んだ。アメリカンフットボールは法政二高時代から始め、大学時代は大学全日本選抜チームの主将も経験。2016年から18年春まで法政大アメフト部の監督(後に総監督)。スポーツ庁の「日本版NCAA創設に向けた学産官連携協議会」の委員を務めた(写真提供:ドーム)

コロナ下での東京オリンピック・パラリンピック開催となります。感染拡大のリスクもある大会となりますが、どのような感想をお持ちですか。

安田秀一氏(以降、安田氏):誰もが思っていることでしょうが、すごく残念な祭典になっています。世界のアスリートからも祝福されていない。ウガンダ選手団の中で新型コロナウイルスの陽性が判明し、残りの選手たちは濃厚接触者としてホテルに隔離されました。日本に来ても部屋から出られない状況が続くという、選手に対して非人間的な扱いをしなければならない。彼らのメンタルが心配になります。そうした意味でも東京五輪は残念な大会と感じています。

 五輪はコロナ禍がない平時に開催していたとしても、運営には非常に厳格さが求められます。ドーピング検査などがその1つです。例えば、バレーボールが準決勝まで進み、残った4チーム中3チームからコロナ感染者が出たとしたら決勝戦は中止にせざるを得ないでしょう。ひょっとしたら熱が37度以上あっても黙って試合に出る選手がいるかもしれない。では、体温が何度だったら試合への参加を取りやめるか。その判断を誰が行うのか。課題は山積しており、適切に処理するのは不可能でしょう。仮にやり遂げることができたとしてもぐだぐだになってしまう。

 日本が今やるべきは国民へのワクチン接種です。東京五輪は最優先事項ではない。ワクチン接種率が高い国では経済が回復し始めている。しかし、日本は五輪開催のためにコロナ禍からの回復が遅れる恐れがあり、世界からも景気の先行きは暗いと見られてしまうでしょう。IOC(国際オリンピック委員会)のジョン・コーツ調整委員長は新型コロナウイルスの緊急事態宣言が発令された状況でも大会を開催する意思を示した。日本は他の先進国に比べてワクチン接種率が低いのです。私たちは「穴の開いた泥船」に乗っている状態ですよ。もっと怒らなければ。

開催2カ月遅らせれば今より安全に

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この記事はシリーズ「逆風下の東京五輪」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。