東京都と埼玉県が6月4日、東京五輪によって生じるCO2を全量相殺できるクレジットを五輪組織委に寄付した。実は2つの意味で、「五輪史上初」の取り組みなのだが、社会的な認知度は驚くほど低い。開催自体が危ぶまれてきたことも一因だが、脱炭素時代の五輪のあり方を考えさせられる課題も透けて見えた。

都と埼玉県は6月4日、五輪組織委に企業からのCO<sub>2</sub>削減クレジットを渡した(写真=Tokyo 2020)
都と埼玉県は6月4日、五輪組織委に企業からのCO2削減クレジットを渡した(写真=Tokyo 2020)

 東京都と埼玉県は6月4日、東京五輪・パラリンピック組織委員会に都内・県内の企業から集めた二酸化炭素(CO2)の削減クレジットを受け渡した。

 五輪は世界最大のイベントの一つ。施設建設や運営、観客の移動などで大量のエネルギーを消費する。東京五輪で生じるCO2は約273万トンと試算されている。一方、都内153事業者、県内64事業者が提供したCO2削減クレジットは約438万トン。これを充当すれば、建設段階を含め東京五輪で生じるCO2を相殺(オフセット)できる。

 東京都と埼玉県は国に先駆けて、独自の排出量取引制度(キャップ・アンド・トレード)を実施してきた。

 都は2010年に制度を開始。年間のエネルギー使用量が一定以上の事業所はCO2の削減義務量を負う。これを上回る削減を果たした分は、CO2削減クレジットとして売却もしくは譲渡することができる。逆に削減量が不足した企業は、クレジットを購入もしくは譲り受けて不足分を補わなければならない。都と県は排出量取引制度のクレジットの無償提供を呼びかけ、企業が応じた。

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