7月23日の開幕まで1カ月を切った東京五輪。混乱の中、急ピッチで準備が進むスポーツの祭典の経済効果や意義はどれだけあるのか。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストに聞いた。
五輪競技会場の観客数の上限について、収容定員の50%以内、最大1万人とすることが決まりました。観客の有無の重要性についてどうお考えでしょうか。
木内登英氏(以下、木内氏):世界中のほとんどの人が五輪をテレビで見るはずです。それに比べれば、実際に会場を訪れる観戦者はごくわずかでしょう。観客を入れるか入れないかは大会の成否とそこまで関係しないと思っています。一方で観客を入れれば、人の流れが増えるので感染リスクは高まります。国が感染リスク対策を重視するのであれば、無観客とするのが本当は自然だったのではないでしょうか。
五輪は地域と東京を行き来する人が増えます。コロナ禍で年末年始の休みや大型連休で人の流れが増えて感染拡大につながってしまったように、五輪という大きなイベントを開催することによって東京に人が集まり、また地域に帰っていけば、地域に感染が一気に広がるリスクがあります。

コロナウイルス変異株の急拡散は懸念材料です。
木内氏:英国ではワクチン接種がだいぶ進んだが、変異株拡大によってロックダウン緩和が延長されました。一方、日本のワクチン接種は加速していますが、しかし五輪までに十分に接種が進むか不透明です。もしかしたら変異株に対する効力も落ちる可能性もあります。そう考えると、大きなリスクがありながら開催を決めたという印象です。
地方自治体、大規模接種センター、さらに企業・大学の3重の取り組みでワクチン接種はスピードアップされています。今後は企業や大学でもカバーされない層、つまり若年層にワクチン接種をどう広げていくかが課題です。オリンピックで盛り上がるのは比較的若い人たちかもしれず、そこはワクチンでは対応しきれない比率が高いのではないでしょうか。
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