先進的な中小企業の中には、大企業にはないアイデアを持つ会社もある。東京・秋葉原に店を構える名物家電メーカー、サンコーもその一つだ。アイデア不足に悩む大企業を横目に「世の中にない新商品」を次々開発し続けている。
JR秋葉原駅から徒歩6分。「レアモノショップ」という看板を掲げるだけあって、そこに足を踏み入れると、むしろ“レアでないもの”を見つけるのが難しい。
例えば、最短14分で米を炊き上げる「おひとりさま用超高速弁当箱炊飯器」(6980円、税込み=以下同)。職場に持ち込めば、オフィスのデスクでも炊きたてのご飯を味わえる。「毎日、昼食がコンビニのおにぎりやお弁当ではどこか味気ない」と感じている人には気になる商品だ。

人の形をした乾燥機にシャツを着せてシワを伸ばす「アイロンいら~ず」(8480円)という商品もある。文字通り、ベランダで干すこともアイロンをかけることもなく、洗い立てのシャツを約30分で乾かし、シワを取ることができる。これがあれば、朝、会社に着ていくワイシャツがなく難儀することはもうない、との触れ込みだ。
さらに、工事不要のタンク式食器洗い乾燥機「ラクア」(2万9800円)も注目商品。食洗機を置きたいが、賃貸暮らしなどで設置する際の大掛かりな工事が導入のネックになっている家庭は少なくない。その点、ラクアはタンク式で水道からの給水が不要なため、すぐに使うことができるという(排水と電源は必要)。
このほかにも、猛暑対策として首からかけて涼感を得る「ネッククーラーEvo」(4980円)に、布団の上で寝ながらタブレットやノートパソコンが操作できる「仰向けゴロ寝デスク2」(4980円)と、そこはまさにレアものの宝庫。ここは、一風変わった家電製品を次々投入し話題を集める売上高43億円の異色企業、サンコー(東京・千代田)の秋葉原総本店だ。

大企業にまねできない理由
「面白くて役に立つ商品を社会に提供する」「今までにない新しい価値を生み出す」――。そんな志を掲げ、商社に勤務していた山光博康CEO(最高経営責任者)が独立し、サンコーを創業したのは2003年。きっかけとなったのは前職での経験だ。「世の中にない面白い商品やサービスの開発を盛んに提案していたが、様々な理由で却下され続けていた。やりたいことをやるには独立するしかなかった」。山光氏はこう振り返る。
山光氏が当時抱えた悩みは、多くの大企業の商品開発担当者が今も抱える悩みでもある。イノベーション不足に悩むと言われる日本の大企業。だが社内にアイデアが全く生まれていないわけではないし、その技術力をもってすればサンコーが手掛けるような新商品を作ることも可能だ。ただ大企業の場合、往々にして、新しいアイデアが商品化されるまでには、様々な関門をくぐる必要がある。
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