中小企業は大企業に比べ体力が弱く生産性も低い――。多くの人はそう考えている。だが、技術力や革新性などで大企業より先進的な中小企業を探すのは難しくない。その代表格が、コロナ禍で日本を救った、新潟のツインバード工業だ。

ツインバードの「ディープフリーザー」によって超低温でワクチンを運ぶ(新潟県燕市提供)
ツインバードの「ディープフリーザー」によって超低温でワクチンを運ぶ(新潟県燕市提供)

 新型コロナウイルスの収束に向けて欠かせないとされるワクチン接種。菅義偉首相は1日当たり100万回を目標に掲げ、遅ればせながら日本でも7月23日からの東京オリンピック・パラリンピック開催を前に接種が進んでいる。このコロナ用ワクチン、当初は供給面で大きなボトルネックを抱えていた。それは、ワクチンによっては零下数十度という超低温での管理が必要なことだ。

 ワクチンを国中へ普及させるには、庫内温度を安定的に超低温に維持する機能と、全国津々浦々まで運搬できるコンパクト性を兼ね備えた特殊な冷凍庫が必要になる。一般人には用途すら思い浮かばないそんなマイナーな機器を迅速に増産し、国難の打開に一役買っているのが新潟県燕市のツインバード工業だ。

 1951年に創業し、金属加工で名の知れる燕三条地域で家電製品などを製造してきた、従業員300人あまりの同社。そのトップである野水重明社長が「これがワクチンの運搬に使われている製品です」と紹介するのが「ディープフリーザー」と名付けた独自機器だ。2021年4月までに、武田薬品工業と厚生労働省へ5000台ずつ計1万台を納めた。

武田薬品と厚労省へ計1万台を納め、全国で使われている
武田薬品と厚労省へ計1万台を納め、全国で使われている

宇宙ステーションでの実験機器

 高さ46cmの箱型で、庫内は零下40度で冷やし続けることだけでなく、1度単位の厳密な温度管理が可能。16.5kgと運搬もさほど難しくない。武田薬品の品質試験にパスした運搬冷凍庫はディープフリーザーしかないという。

 6月17日時点で1回目の接種を済ませた人が全人口の16.3%と、ただでさえ遅れが目立つ日本のワクチン接種。ディープフリーザーがなければさらなる混乱が起きていた可能性もある。世界に名だたる大企業が居並ぶ日本の製造業だが、結局、肝心な時に国を救ったのは、新潟の中小企業だったというわけだ。

 ディープフリーザーの核となっているのは、フリー・ピストン・スターリング・クーラー(FPSC)という技術だ。円筒内でピストンが往復運動し、ヘリウムガスを膨張・圧縮させることで冷却する。用途が非常に限定的で、コロナ禍以前は国際宇宙ステーションの日本実験棟などで使われてきた。

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