人口減少に伴う市場縮小、後継者不足、長引くコロナ禍。全国の中小企業がいよいよ追い詰められている。「小さな会社は生産性が低いから、日本経済のため大胆に整理した方がいい」――。そんな中小企業不要論も現実味を帯び始め、政府が早期の最低賃金引き上げを示唆するなど、改革についていけない企業を淘汰するかのような動きも実際に広がってきた。だが、日本の中小企業には、大企業にない技術や革新性を持つ会社もいまだたくさんある。彼らをやみくもに再編統合し“大企業化”すれば、多くがその魅力を失いかねない。日本経済を本当に強くするための中小企業改革を考える。(写真:Shutterstock)
シリーズ
中小企業をなめるな! 「大きい=強い」理論の落とし穴

全6回
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ワクチン接種で大活躍 新潟の中小企業が国難を救えた理由
中小企業は大企業に比べ体力が弱く生産性も低い――。多くの人はそう考えている。だが、技術力や革新性などで大企業より先進的な中小企業を探すのは難しくない。その代表格が、コロナ禍で日本を救った、新潟のツインバード工業だ。
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アイデアの王様どころか大王様 秋葉原ショップ、サンコーの舞台裏
先進的な中小企業の中には、大企業にはないアイデアを持つ会社もある。東京・秋葉原に店を構える名物家電メーカー、サンコーもその一つだ。アイデア不足に悩む大企業を横目に「世の中にない新商品」を次々開発し続けている。
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コロナ禍でも強い姫路の中小企業 「モーレツ」と正反対の働き方
一部の中小企業が大企業に勝るのは、技術力やアイデア力だけではない。中には、働き方改革など生産性の向上で大企業に先行する会社もある。この逆転現象の背景にも「簡単にルールを変えられない」という大企業の特性がある。
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「歯を磨く人」がいるなら世界の果てまで 千葉の小さな国際企業
中小企業であるにもかかわらず、世界50カ国に販路を築いた会社がある。大手の寡占が進む国内市場を横目に、地道に独力で現地の販売代理店と提携。海外市場開拓で重要なのは、必ずしも資金力の有無ではない。
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ずっと前から社員の1割外国人 埼玉・入間のダイバーシティー空間
15年近く前から人材の多様化を進め、人手不足を解消している世界的中小企業がある。トップの「経営者と従業員の垣根を越えたサポート」が外国人材の定着を促した。ダイバーシティー戦略の成否もまた、企業規模の大小では決まらない。
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中小企業再編論の死角 日本人は集まると足の引っ張り合いをする説
全国の中小企業をやみくもに統合するだけでは、強い企業は生まれない。強い中小企業の魅力を維持するには、国民性まで加味した再編プランが必要だ。そんな理想の中小企業改革が実現したとき初めて、日本経済は再生の出発点に立つ。
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全8回