東京証券取引所が2022年4月、3つの市場に再編される。これと両輪で上場企業の質を高めるコーポレートガバナンスコードも21年6月に改定された。最上位のプライム市場に上場する企業では社外取締役を3分の1以上(支配株主がいない場合)にするなど、その役割と存在感が大きくなる。社外取締役はどのような役割を求められるのか。十分な機能を果たしているかと疑問符を付けられることもあった社外取締役の何が問題なのか。6社の社外取締役・同監査役を務める公認会計士の大久保和孝氏と、経済学者出身で、現在は企業の幹部教育機関を運営する中谷巌氏に聞いた。

上場会社だけで6社の社外取締役・監査役を兼務しています。しかも、ゲーム、不動産、ガス、自動車部品など多様な業種にわたっています。どんな役割を果たしているのですか。

<span class="fontBold">大久保和孝(おおくぼ・かずたか)氏。</span><br>1995年、大学在学中にセンチュリー監査法人(現・EY新日本有限責任監査法人)に入所し、99年公認会計士登録。2006年新日本監査法人パートナー。16年、経営専務理事に就任。19年退任。現在、大久保アソシエイツ社長の他、上場企業だけでセガサミーホールディングスや武蔵精密工業など計6社の社外取締役・同監査役を務めている。
大久保和孝(おおくぼ・かずたか)氏。
1995年、大学在学中にセンチュリー監査法人(現・EY新日本有限責任監査法人)に入所し、99年公認会計士登録。2006年新日本監査法人パートナー。16年、経営専務理事に就任。19年退任。現在、大久保アソシエイツ社長の他、上場企業だけでセガサミーホールディングスや武蔵精密工業など計6社の社外取締役・同監査役を務めている。

大久保和孝氏(以下、大久保氏):社外取締役に求められる機能は、ガバナンス(企業統治)の強化と企業価値の向上だと思います。私も公認会計士ですが、士業の人や学識経験者の社外取締役は、取締役会では自分の専門領域に関することにだけ意見を述べようとする傾向があるように感じます。ですが、やはりそれは違うのではないでしょうか。もっと重要な役割があるように感じます。

 まずガバナンスについて話しましょう。これは執行と監督が完全に分離していることを前提とする場合ですが、監督を行う取締役会にとっては、その企業のリスクコントロールをすることが最大の課題のはずです。

 例えば、地震などの災害や、経済環境、コンプライアンス(法令順守)の問題など、企業にはその時々でいろんなことが起きます。そこには、関わる様々なリスクがあります。大事なことは、取締役会などで事務局が提示した多くのリスクに対して質疑をするだけではなく、優先度について意思決定することです。

 一般的に社内取締役は、自社事業に関する長年の経験や知識から、社外取締役は、それぞれのその専門分野から何かを言って、十分な議論もないままリスクにどう対応するかを決めることが少なくありません。でも、膨大なリスク一覧表の中から、自分たちの関心のある特定のものについてだけ議論をしても経営判断としては意味がありません。

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