謝罪を巡って取り上げたいことの一つに「会見を開かない」という企業のトレンドがある。個人がネットで情報を収集することを前提に、自社のウェブサイトに謝罪文を載せるケースが増えた。会見を開くべきかどうかの境界線はどこにあるのか。最終的に会見を開いたものの、事案発生から時間が経過して傷口を広げた三幸製菓(新潟市)の例を見てみたい。

■連載予定
(上)SMBC日興や日野自動車 生配信された謝罪、トップ悩ます大衆監視
(中)「生娘シャブ漬け」謝罪した吉野家 実は女性活躍、訴える機会逃す
(下)「謝罪会見は開かない」は賢い選択か ある有力菓子メーカーの教訓

 2月11日深夜、新潟県北部の村上市にある荒川工場で火の手が上がった。おかき餅の生産ラインにあった焼釜室からの出火で、従業員6人が死亡、1人が負傷した。安全確認を優先するため、他の工場を含め全ての生産をいったん停止させた。

おかき餅の生産ラインにあった焼釜室から出火し、従業員6人が死亡、1人が負傷した(写真:共同通信)
おかき餅の生産ラインにあった焼釜室から出火し、従業員6人が死亡、1人が負傷した(写真:共同通信)

 三幸製菓は「雪の宿」や「チーズアーモンド」で知られ、亀田製菓に次ぐ業界2位。知名度は高く、様々な関係者にショックを与えた。火災の後、13日の日曜日にウェブサイトで事故の経緯を報告。遺族や地元の関係者、消費者などに向けて謝罪した。

 だが、記者会見はすぐに開かなかった。地元メディアの報道によると、遺族や記者クラブが会見を開くよう求めたが、「検討する」との回答が得られただけだったという。

 最終的に会見を開いたのは約3カ月半後の5月末。時間がかかった理由について、三幸製菓の担当者は「火災事故調査委員会の調査がまとまり、5月末の時点で想定し得る原因と再発防止策を説明できる状況になったから」としている。

 企業はどんな事案の場合に会見を開くべきなのだろうか。

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