不祥事を受けて謝罪する企業が相次いだ2022年。牛丼大手の吉野家ホールディングス(HD)では、多様性やジェンダーの重要性が指摘される時代の流れに、完全に逆行する役員の発言が問題になった。役員1人の発言ではあったが、吉野家という企業そのものの姿勢と受け止められた。このとき、女性が活躍する環境整備に力を入れていることに説明を尽くせば、炎上の状況は変わっていたかもしれない。
■連載予定
(上)SMBC日興や日野自動車 生配信された謝罪、トップ悩ます大衆監視
(中)「生娘シャブ漬け」謝罪した吉野家 実は女性活躍、訴える好機逃す
(下)「謝罪会見は開かない」は賢い選択か ある有力菓子メーカーの教訓
4月16日の土曜日、早稲田大学で社会人向けのビジネス講座が開かれた。当時の常務が、吉野家のマーケティング施策について「生娘をシャブ漬けにする戦略」と表現した。「田舎から東京に出てきた若い無垢(むく)な女の子を牛丼中毒にする。男性から高い食事をおごってもらえるようになれば牛丼は食べない」という説明をする際に出た発言だった。

表面化した理由はフェイスブックへの投稿だった。発言のあった当日に、不快感を覚えた受講者が問題提起する目的で書き込んだ。生娘という言い回しに加え、違法薬物の乱用を示すシャブ漬けという表現も相まって、ツイッターなどであっという間に批判が広がった。
日本リスクマネジャー&コンサルタント協会(東京・渋谷)の石川慶子副理事長は「女は男に尽くすべき、といった通常レベルの失言よりも耳に強く残るフレーズで、事態の収束をより困難なものにした」と話す。
吉野家は週が明けた18日の月曜日、謝罪文のプレスリリースを会社ウェブサイトに載せた。同日、臨時取締役会を開いて常務の解任を決定し、19日に発表した。
問われた企業の姿勢
しかし、謝罪文や役員解任をサイトで発表した後もソーシャルメディア上の批判は収まらなかった。
役員1人の発言だったものの、企業の姿勢が問われ「吉野家に就職しても女性は活躍できないのでは」「就活で受けるのはやめておこうかな」などという声が広がった。
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