あらゆる企業にとって、不祥事はいつでも起こり得る。事業を営んでいる限り、隣り合わせのリスクだ。実際に不祥事が起こってしまったら、経営の危機ととらえて対応することが必要になる。多くの場合は謝罪することになるが、ソーシャルメディア上で炎上が止まらず、信頼を回復できないケースが後を絶たない。2022年に起きた事案を3つ選んで、専門家の意見を参考にしながら謝罪にまつわるリスクと対応策を考える。

■連載予定
(上)SMBC日興や日野自動車 生配信された謝罪、トップ悩ます大衆監視
(中)「生娘シャブ漬け」謝罪した吉野家 実は女性活躍、訴える機会逃す
(下)「謝罪会見は開かない」は賢い選択か ある有力菓子メーカーの教訓

謝罪会見をすべてライブ配信する事例が増えている(SMBC日興証券の近藤雄一郎社長)
謝罪会見をすべてライブ配信する事例が増えている(SMBC日興証券の近藤雄一郎社長)

 SMBC日興証券の相場操縦事件では、元副社長を筆頭にして元エクイティ部長ら6人と、法人としての同社が金融商品取引法違反罪で起訴されている。問題となったのは、大株主が保有する株を引き取って投資家に転売する「ブロックオファー取引」だ。

 この取引では、株価が基準より下がると不成立になる。逮捕容疑は、上場企業の株価を安定させるため、大量の買い注文を出したことにある。

 近藤雄一郎社長は謝罪会見を4回開いた。1回目は社員が逮捕されたことを受けて、3月5日に実施した。以降、11月にかけて、外部専門家による調査委員会の報告を公表するタイミングなどに合わせ、会見を3回開いている。批判が強まったのは、ネットでライブ中継されたことがきっかけだった。

 「市場の信頼を著しく揺るがす重大な事態を引き起こしたことを重く受け止め、深く反省致しております」。近藤社長は3月24日の2回目の会見で、冒頭に謝罪した。黒っぽいスーツとネクタイで、立って淡々と言葉をつなぐ。

 その間、およそ3分。近藤社長は30回、机に置いた資料に目を落とした。会場と資料を目が行き来し、発言のところどころに不自然な間が開いた。事案の概要説明に移ったときも同様だった。

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