本シリーズ「内部告発、その後を追う」でこれまで見てきた通り、正義のために立ち上がった内部告発者は時として、その後厳しい状況に追い込まれてきた。告発者を守るための公益通報者保護法が整備されたものの、十分に機能しない面があることも浮き彫りになっている。同法は2022年6月に改正施行されるが、それでもなお、裁判になった際に違法行為があったことを通報者側が立証しなければならないなど、課題が残ったままだ。

 1970年代、トナミ運輸在職中に会社の闇カルテル問題を告発した串岡弘昭さんも公益通報者保護法を問題視する一人だ。「何がダメなのかメルクマール(指標)ができたことは評価できるが、公益通報者の声が全く反映されていません」とさらなる見直しを訴える。

 「重要なのは、通報をすると、その人の将来が完全に奪われる可能性があるという影響の大きさです。同法で通報者への降格処分などは禁止されていますが、人事権は会社側にあり、報復を受ける可能性があります」と指摘する。

「告発すると将来は完全に奪われる」と語る串岡弘昭さん。告発者を保護するための法体制整備のさらなる強化を求めている
「告発すると将来は完全に奪われる」と語る串岡弘昭さん。告発者を保護するための法体制整備のさらなる強化を求めている

四半世紀、会社から隔離

 改正法は、通報を受ける担当者が、同法に違反した行為をした場合、刑罰を科すことになった。串岡さんは「業務を担当した個人だけでなく、法人も罰するという『両罰規定』の考えを取り入れなければなりません」と訴える。労働者を守る労働基準法は、労働基準監督署が企業へ立ち入り検査をして違法を立証できるとしている。公益通報者にはそうした体制づくりがなされていないことへの不満もある。

 串岡さんがこう指摘するのにはワケがある。自身、告発した報復として29歳から30年余り仕事がほぼない閑職に追いやられた。会社側の強い権力を身に染みて感じているからだ。公益通報制度がない時代。串岡さんは一人で闘った。2002年、「人権を侵害した」などとして報復人事による損害賠償などを会社に求め、富山地裁に提訴して勝訴。

 串岡さんはその後、会社と和解したが、そこに至るまでは厳しい状況に追いやられた。四半世紀以上という長い期間、社内で“隔離”状態となったのだ。

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