9月、岸田文雄首相は米ニューヨーク証券取引所で講演し、日本のコーポレートガバナンス(企業統治)の進化を強調した。東証プライム市場上場企業では社外取締役の増員が急ピッチで進むが、上場企業の半分程度は株価が本来の企業価値を下回るなど市場の評価は道半ば。取締役会の実効性や強い執行体制の整備が課題と専門家は指摘する。
■本シリーズここまで
(1)最先端のガバナンスで混乱する東芝 社外取締役は必要か
(2)ボード3.0の巨人エクソン アクティビスト社外取が脱炭素を主導
(3)ボード3.0の源流にジョブズ氏も 閉塞感を打ち破るきっかけに
(4)日本でもボード3.0 アクティビストと元経営者のオリンパス改革
(5)丸井グループが掲げる日本版ボード3.0 社外取は長期投資家
(6)富士通と日立の改革支える「外部の目」 社外取が取締役会を活性化
(7)“女性社外取バブル”の光と影 日本のガバナンス改革の現在地
(8)“お飾り”の女性社外取 株価は上がるが業績は上がらず
(9)社長辞任を迫られても納得する人こそ社外取の理想
(10)ボード3.0では投資家以外のステークホルダーにも配慮を
「日本がこの10年で行ったさまざまな改革によって日本企業の行動は大きく変わり、ほぼ全ての会社に独立社外取締役が入った。女性や外国人のボードメンバーへの登用も増えていくだろう。ノンコア事業の切り出し、新分野へのピボット(転換)といった大胆な企業変革に踏み切る企業も出てきている」──。

岸田文雄首相は9月22日、ニューヨーク証券取引所で講演し、日本のコーポレートガバナンスの進化を強調。「近々に世界中の投資家から意見を聞く場を設ける」とまで呼び掛けた。
政府主導のガバナンス改革は2014年まで遡る。金融庁が同年2月に機関投資家向けのスチュワードシップ・コード(企業との対話で中長期的な成長を促すための行動原則)を公表した後、安倍晋三内閣が6月、成長戦略で「企業の稼ぐ力」にフォーカスを当て、企業統治の強化を明記した。
15年6月にコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の適用が始まると、社外取締役のあり方や実効的なガバナンス体制の構築、事業再編など実務の手引きを相次いで整備した。
統治指針自体も3年ごとに見直し、21年6月に2回目の改訂を実施。プライム市場の上場企業は、東証の基準を満たした独立社外取締役を3分の1以上、さらに必要なら過半数まで増やすよう要請。サステナビリティーや多様性の取り組みも監督の対象に加えた。
社外取締役を増員する動きはプライム市場にとどまらない。企業統治助言会社のプロネッド(東京・港)によると、東証上場企業の7割超で社外取締役が全体の「3分の1以上」か「過半数」だ。まだ米英には及ばないが、着実に浸透しているのは確かだ。
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