「接種有無、会話しないで」と呼びかけ

 「ワクチン接種に関する個人の意向や有無についてのお話はお控えください」──。

 全国で女性専門ジムを運営するカーブスホールディングスは7月からこんな張り紙を店内の掲示板に貼り出している。ワクチン未接種者への配慮だという。

 なぜ、あえて注意書きの張り紙までしたのか。同社の広報担当者は「我々は健康増進を目的としたジムなので、過去大きな病気を患った会員もいる。社内でどのようなジムであるべきかを議論した。基礎疾患があるなどの理由で医者からワクチン接種を止められ、接種を受けたくても受けられない人が、ジムで肩身の狭い思いをしてほしくないと考えたため」と話す。

 「私たちはそんな会話をそもそもしない」という会員からの反発の声も考えられた。しかし、実際はそのような批判はなく、むしろ今回の取り組みについて好意的に受け止める意見が本社に届いているという。

 ワクチン未接種者との向きあい方について企業側が求められる姿勢とは何か。労働問題に詳しい嶋崎量弁護士は「施設利用料の割引など、ワクチン接種者へのある程度の便宜は認められてもいいが、ワクチン未接種者への不利益の緩和には努めなければならない。ワクチンを打ちたくない人がいれば、その考えを尊重した上で、なぜなのかなど丁寧に対話していけば、解決策が見えてくるはず。そうした柔軟性がより必要になる」と指摘する。

 ワクチン接種証明に関する議論が進んでいるが、日本では本格的な導入はこれから。ワクチン接種がさらに進むにつれ、個人意思の尊重、少数派への配慮が企業側に求められることになる。次回は人権問題に詳しい弁護士に、企業が気を付けるべき点を聞く。

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