外食や小売り、サービス業など従業員と消費者、または消費者同士の接触が多い業界においては、従業員の新型コロナウイルスのワクチン接種歴について、どのように扱えばいいのかの関心が高いことはこれまで見てきたとおりだ。

<本シリーズの記事>
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 その一方で、従業員のワクチン接種に関してどこまで踏み込んでいいのかについては企業は手探りだ。企業が注意すべき点を、日弁連人権擁護委員会委員長を務める川上詩朗弁護士に聞いた。

国内では新型コロナウイルスのワクチンを2回接種した人の割合が7割を超えました。企業側が従業員にワクチン接種を推奨したり、インセンティブを与えるといった事例も聞かれるようになりました。

川上詩朗氏(以下、川上氏):まず前提として、ワクチンの接種は義務ではありません。接種するかどうかは個人に自己決定権があり、任意のものです。なので、義務化することは人権の侵害になりかねません。

 企業が感染症対策の観点でワクチン接種を従業員に勧めることは、悪気があるわけではないでしょうが、そのやり方が過剰になれば人権問題に発展する恐れがあるということを認識すべきでしょう。

<span class="fontBold">川上詩朗(かわかみ・しろう)氏</span><br>1958年生まれ、北海道出身。立教大学を卒業後、1996年弁護士登録。かわかみ法律事務所代表で、日弁連人権擁護委員会委員長も務める
川上詩朗(かわかみ・しろう)氏
1958年生まれ、北海道出身。立教大学を卒業後、1996年弁護士登録。かわかみ法律事務所代表で、日弁連人権擁護委員会委員長も務める

これまでに、どういった問題が確認されているのでしょうか。

川上氏:問題のあるケースとしては3つのパターンに分けられます。

 まず、「ワクチン接種しないなら仕事を辞めなさい」というような不利益を示して、接種を迫るパターンですね。実際に解雇されてしまったケースも散見されます。これは個人の自己決定権を脅かす人権侵害となる恐れがあります。

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