ボード3.0の要素を取り入れたガバナンス体制を構築し、2022年3月期から5年間の中期経営計画をスタートさせた丸井グループ。同社の株主である、みさき投資(東京・港)の中神康議社長を社外取締役に迎えた。「市場のドライな目線」で助言してもらい、新型コロナウイルス禍からの回復につなげる。

■本シリーズここまで
(1)最先端のガバナンスで混乱する東芝 社外取締役は必要か
(2)ボード3.0の巨人エクソン アクティビスト社外取が脱炭素を主導
(3)ボード3.0の源流にジョブズ氏も 閉塞感を打ち破るきっかけに
(4)日本でもボード3.0 アクティビストと元経営者のオリンパス改革

 ボード3.0の要素を取り入れたガバナンス体制をスタートさせる――。

 小売り大手の丸井グループは2022年3月期から5年間の中期経営計画が始まるのに合わせて、ボード3.0の考え方を経営に取り入れると宣言した。21年6月に社外取締役を新たに2人選任。NPO代表理事でサステナビリティー(持続可能性)の専門家であるピーター・D・ピーダーセン氏と、丸井グループ株を保有する株主でもある、みさき投資の中神康議社長だ。みさき投資は長期保有を前提に投資し、短期的な利益を求めがちな物言う株主(アクティビスト)と一線を画す。丸井グループの青井浩社長のオファーに、中神氏は二つ返事で了承した。

みさき投資社長で、丸井グループ社外取締役の中神康議氏。株主・投資家の視点から経営陣にアドバイスする
みさき投資社長で、丸井グループ社外取締役の中神康議氏。株主・投資家の視点から経営陣にアドバイスする

 なぜ株主を社外取締役に起用したのか。青井氏は「中長期の成長戦略を決めるタイミングで、企業価値を高めるという点で利益が一致している株主とであれば協力し合えるのではないかと考えた」と答える。

「市場のドライな目線を」

 丸井グループは、リアルの店舗で商品を見てネットで注文をする「ショールーミング」を目的とした店をテナントに誘致するなど、従来型の小売りから脱却する取り組みを進めてきた。小売事業に並ぶ軸と位置付けるフィンテック事業も伸長している。新型コロナウイルス禍が業績の打撃となったが、「次の成長を考える時期だった」と青井氏は振り返る。

 青井氏は以前から、同社の経営について年数回程度、中神氏と議論していたという。中神氏もかねて、投資家も経営に参画すべきだと唱えてきた。「日本企業は伝統や人間関係を重視した経営をしがちだが、もう少し市場のドライな目線も取り入れてバランスを取った方がいい」と主張してきた。

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