物言う株主(アクティビスト)から3人もの社外取締役を受け入れた米石油大手エクソンモービル。仕掛けたファンドはエクソン株を0.02%しか保有していなかったが、脱炭素対応の遅れが将来の多大な損失につながりかねないと主張し、他の大株主が賛同。アクティビストの社外取は今、エクソンの脱炭素戦略を先導している。ボード3.0を巡る米国の動向をリポートする。

■本シリーズここまで
(1)最先端のガバナンスで混乱する東芝 社外取締役は必要か

 2021年5月、米国のあるアクティビストの名がウォール街中を駆け巡った。エンジン・ナンバーワン。投資家で慈善活動家のクリス・ジェームズ氏が20年にサンフランシスコで立ち上げた、ESG(環境・社会・企業統治)特化型のファンドだ。

 舞台は米石油大手エクソンモービルの株主総会。社外取締役の議席獲得に向け、エンジンは20年12月から着々と準備を進めていた。

エクソンモービルは環境への影響を偽ったとしてニューヨーク市政府などから訴訟を起こされた(写真:AFP/アフロ)
エクソンモービルは環境への影響を偽ったとしてニューヨーク市政府などから訴訟を起こされた(写真:AFP/アフロ)

 「エクソンの温暖化対策はスピードが遅すぎる。取締役会にはエネルギーに詳しい社外取締役もいない。株主利益を著しく損なう恐れがあるため、新たに4人の社外取締役候補を提案する」──。エンジンはエクソン株の0.02%しか保有していなかったが、こんな書簡を同社に送りつけ、他の株主の協力を仰いだ。

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