「この会社はソフトウエア会社なのか、サービス会社なのか」
アバントの森川徹治社長グループCEO(最高経営責任者)は3年ほど前、取締役会で社外取締役の1人から痛烈に言い放たれた日のことを忘れられないという。アバントは東証1部上場で、連結会計ソフト子会社、ディーバや、企業の財務データ分析を引き受ける同、ジール、連結決算・納税業務を受託する同、フィエルテなどを中核とする会計ソフト大手。森川社長は成長戦略を練り直すための議論を今年に入って熱心に繰り返していた。そのとき、改めて考えさせられたのがこの言葉だった。
アバントは1997年5月に森川社長が創業したディーバが発祥。連結会計パッケージソフトの開発で成長し、2004年に連結決算業務などを引き受けるアウトソーシング事業に乗り出すなど00年代に入ると関連サービス分野にも拡大してきた。
「正直、むっとすることもあるが…」
ただ、13年に持ち株会社制に移行して以後、森川社長の中で次第に気になってきたことがあった。「子会社はそれぞれの事業を伸ばしているが、統合的に動ければ、もっと新たな価値を生み出せるはず」ということだ。開発したソフトに分析業務を連動させれば、顧客が抱える懸案解決への提案力が増す。アウトソーシングも組み合わせれば、顧客は間接業務を縮小して、本業にもっと特化できるといったことだ。
事業子会社を専業化するのは、通常は各事業を深掘りして力を高めるためだが、一方で分社化には協業を難しくする問題も起きやすい。企業がしばしば陥る遠心力と求心力のバランスの難である。

そこで森川社長が今年春、考えたのが持ち株会社であるアバントに子会社の事業を統合的に動かす部隊を設けることだった。イノベーティブ・ソリューション・ユニット(ISU)。人材を新たに採用し、子会社の事業を組み合わせたサービスを生み出す一種の遊軍である。子会社の連携力を再強化し、事業を広げるという経営者としては至極まっとうなプランだった。
ところが、これに社外取締役が“難色”を示した。
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