経営者の高齢化で廃業危機を迎える中小企業が増える中、M&A(合併・買収)の仲介業を手掛ける大手5社が10月1日、自主規制団体「一般社団法人M&A仲介協会」を設立した。2025年までに70歳を超える中小企業の経営者は約245万人に上り、そのうち127万人が後継者を決められていない。このままでは、約650万人の雇用と、約22兆円のGDP(国内総生産)が失われる恐れがあるとして、中小企業庁はM&A仲介を後押ししている。

中小企業庁も記者会見に参加し、自主規制団体を後押しする姿勢を見せた
中小企業庁も記者会見に参加し、自主規制団体を後押しする姿勢を見せた

 10月7日の記者会見で強調されたのは、M&A仲介コンサルタントの「モラル向上」だった。M&Aを巡る経営者が抱える不安をトラブルが助長している実態が、普及を阻んでいる。その背景には、仲介業が内在する「利益相反」がある。

 「上場5社のノウハウを幅広く集約し、業界に広めて、利益相反の問題を極小化してきたい」

 M&A仲介協会の代表理事を務める三宅卓・日本M&Aセンター社長は会見でこう述べた。同社に加え、ストライク、M&Aキャピタルパートナーズ、オンデック、名南M&Aの5社が、協会の理事として参加する。仲介コンサルタントの質を向上するための教育や研修機会の提供、企業経営者からの相談窓口の運営に取り組むという(ただし、日本M&Aセンターは、上場する日本M&Aセンターホールディングスの子会社)。 

M&A仲介業の利益相反問題は、河野太郎・前規制改革相による指摘が世に広く知られるきっかけとなった(写真:ロイター/アフロ)
M&A仲介業の利益相反問題は、河野太郎・前規制改革相による指摘が世に広く知られるきっかけとなった(写真:ロイター/アフロ)

 M&A仲介業の利益相反が世間で知られるようになったのは、河野太郎・前規制改革相が20年12月に掲載したブログだ。「(売り手、買い手の)双方から手数料を取る仲介は、利益相反になる可能性がある」と指摘したのだ。

 大手企業のM&Aの場合、買い手と売り手がそれぞれフィナンシャルアドバイザー(FA)や弁護士事務所と契約して、条件交渉を行うことが一般的だ。一方で中小企業の場合は、売り手と買い手の間に同一の事業者が入り、会社や事業の売買を取り持つことが多い。

 売り手にとって、「M&Aは一生に1回か2回あるかないか」(ある仲介業者)だが、買い手は今後も買収を行う可能性がある。将来の商機を考えれば、仲介業者は買い手側に有利な条件を付けた方が得だというインセンティブが働きやすい。

 もう一つは、成功報酬だ。仲介業が得る手数料には、着手金、基本合意時に発生する中間金、成約時に支払う成功報酬などがある。中間金を支払う頻度が多いと、経営者の不信を招きやすいこともあり、近年は成功報酬のみの業者も増えつつある。一方で、成功報酬を得るために、強引に成約につなげようという誘惑が仲介業者に働く。協会の理事を務める久保良介・オンデック社長は個人的見解と断りつつ、「業界にモラル低下があるかないかといえば、ある。この業界は成約しないと飯の種にならない」と話す。

続きを読む 2/3 「まともな仲介企業はほぼ存在しない」

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