女性への性加害、既婚男性との不倫――。私生活の不祥事で有名企業の経営者が相次ぎ辞任した。社会の価値観が変わり、経営者は業務上か否かにかかわらず、常に世間の厳しい視線にさらされる。私事であっても顧客離れにつながりかねず、専門家は初動でいかに誠実な対応を取るかが肝心と指摘する。

 「人権尊重、コンプライアンス(法令順守)徹底を経営の最優先事項と位置付けているにもかかわらず、今回の一部報道にあるとおり、元会長自らがこれに背く行為を行ったことは、極めて遺憾です」

 石油元売り大手のENEOSホールディングスは9月21日、「当社元会長に関する一部報道について」と題したリリースを公表した。杉森務前会長が那覇市の高級クラブの女性店員に性加害を働いたとする週刊誌報道を受け、その内容を認めたものだ。1カ月以上前に杉森氏の辞任を発表していたものの、「一身上の都合」としか説明していなかった。

火に油を注いだENEOS

 同社は、8月の発表時点で杉森氏の辞任理由を明かさなかったのは「被害を受けられた方のプライバシー保護を最優先」したためと釈明する。ただ、週刊誌報道が出た後の開示で対応が後手に回った上、俳優の香川照之さんが高級クラブを舞台とした同様のスキャンダルで世間の激しい非難を浴びていたこともあり、火に油を注ぐ形となった。

ENEOS前会長の高級クラブでの性加害が明らかとなった(写真:PIXTA)
ENEOS前会長の高級クラブでの性加害が明らかとなった(写真:PIXTA)

 ENEOSが“炎上”した同じ9月21日、アウトドア用品大手のスノーピークも山井梨沙社長(当時)の「不倫辞任」を発表したが、その開示姿勢は対照的だった。「一身上の都合」という表現にとどめず、「既婚男性との交際及び妊娠を理由として、当社及びグループ会社の取締役の職務を辞任したいとの申し出がありました」と自ら具体的な情報開示に動いた。

 1000社以上の企業に対して危機管理支援を手掛けてきた井之上パブリックリレーションズ(PR、東京・新宿)の鈴木孝徳社長は「ここまで(私生活に踏み込んだ)直接的な開示は目にした覚えがない」と話す。一昔前なら、経営者の私事を情報開示することすら珍しかった。