(写真:Shutterstock)
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 東証市場再編を機に、金融機関が取引先企業への支援を強化している。

 「本当に上場を続ける必要はありますか?」。りそな銀行の行員は、取引先にディスカッションペーパーを配布し、中長期の成長戦略を聞いて回っている。新設される「プライム」や「スタンダード」などの新市場に上場するか、しないかについてはゼロベースの構えだ。

 上場を続けるには通常の東証1部企業なら、上場維持、ガバナンス対応、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)関連、決算対応などによって、年間最低3000万円以上かかるとされる。ペーパーは上場のメリットとデメリットを整理し「そこまでのコストをかけてやりたいことは何なのか」を明確にしてもらう狙いがある。

 中小企業との取引が多いりそな銀は2020年夏以降、市場再編を見据えて体制を強化。240人規模のソリューションビジネス部で10人前後の専門チームが対応し、信託ビジネス部とも連携している。

「新市場再編を踏まえ、どうすべきか悩んでいる企業も多い」と話すりそな銀の三谷恵太・ソリューションビジネス部長 
「新市場再編を踏まえ、どうすべきか悩んでいる企業も多い」と話すりそな銀の三谷恵太・ソリューションビジネス部長 

 前回、「東証市場再編、『スタンダードで何が悪い』 悩める当落線上の企業」でも見たように、企業側の相談は多種多様だ。「自社株の流動性を向上したい」などという要望があれば、オーナーの保有株式の売却や株主還元策の強化などを勧める。第三者割当増資などのエクイティファイナンスも手段の一つだ。資本効率の改善や業績連動型などの役職員のインセンティブ強化など、中長期的な企業価値向上策に関するものもある。

 プライム基準(流通株式時価総額100億円以上)のボーダーラインにいる、化学品専門商社のソーダニッカ。日経ビジネスがQUICKのデータ(8月24日時点)をもとに調べたところ、流通株式時価総額が100億9600万円だった。同社は5月、1986年の上場後初となる自社株買いを実施した。同社の株価は一時1割強上昇し、時価総額を押し上げた。

 将来の投資について相談に乗ったのが、りそな銀だ。今後の資金需要の備えとして、ソーダニッカは5月、りそな銀がとりまとめ役となって銀行団による100億円のコミットメントライン(融資枠)を設定する契約も結んだ。東証再編を踏まえた企業の攻めの財務戦略に、金融機関が積極的に後方支援に回る構図だ。

 「上場していると、大胆な戦略をとりづらくなる。非上場化も検討している」。顧客にはこう話す企業も多い。成長が見込める分野を中長期で育てたいと考えているものの、「利益が出ていないなら撤退すべきだ」と株主から責められる可能性もあるからだ。

 非上場化で信用力が低下し、融資を受けられなくなることへの心配もある。一般的に、非上場でも金融機関が求める経営関連書類がそろえば、融資審査に直接影響はない。だが、ガバナンスの観点から上場が有利に働くことはある。

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