足元で、来年4月4日の東証市場再編に向けた動きが活発化している。例えば、親会社が子会社の株式を売却してプライム上場基準である流通株式比率35%以上の達成を目指すなどだ。
トヨタ自動車のトヨタ紡織株売却、野村総合研究所による野村ホールディングス(HD)からの自己株取得、ZOZOが創業者・前沢友作氏の保有株を取得……。野村総研が「あくまでも資本効率向上のため。市場選択の発表はまだだが、プライム市場の上場基準は満たしている」(須永義彦・常務執行役員)と語るように、直接再編に絡んでいないケースもあるが、新市場への移行を視野に資本施策の見直しを手堅く進めている企業も目立つ。
しかし前回、「『資本市場を軽視していた』 プライム不適格、サクサHDの改心」でも見たように、基準に満たない企業や当落線上にある企業は、水面下で対策を打ち始めている。こうした企業の動向こそ、東証市場再編問題の根幹だ。
「上場が会社の目的ではない」
「うちにふさわしいのはスタンダード。やみくもにプライムを目指さない」。経営陣で議論した末、一定の方向を見いだした東証1部の居酒屋チェーン大手のある役員はこう打ち明ける。正式発表はまだ先になる。
コロナ禍により、時短営業や酒類提供の停止など、店舗が通常営業できない状態が長引いている。「基準未達でも経過措置で当面はプライム上場を維持できるが、最終的に陥落したら意味がない」とこの役員は語る。
プライム上場企業となれば、独立社外取締役の選任や英文開示促進などガバナンス(企業統治)を整える業務は増える。コンサルティング会社に業務を委託すると年間数百万円単位の経費もかかる。「上場は目標になるが、それ自体が会社の目的ではない」と思い至った。
別の1部上場の外食大手の幹部も「はなからプライムを目指していない。そもそも東証1部上場企業がスタンダードに移行することの何が悪いのか」と語る。ただ、「プライム市場とスタンダードの格差が、今の東証1部と2部のようになるのか今のところ見えない」と不安も口にする。
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