あの企業はプライム○か×か、それとも△か──。
経済界で目下、注目を集めているのが、来年4月4日に予定されている東京証券取引所の市場再編だ。1部、2部、マザーズ、ジャスダックの4市場から、プライム、スタンダード、グロースの3市場に集約される。1部に相当するプライム市場の上場維持基準が実質的に引き上げられることの影響は、該当する企業だけにとどまらない。人口減に苦しむ地方にとっても他人事ではない。

地方に拠点を置く東証1部上場企業は、地元の若者が就職先として憧れる対象の一つ。地元経済を支えているだけでなく、雇用の受け皿として大きな役割を担っている。その当落問題は、地方自治体にとっては税収に影響し、地域住民への生活基盤の構築に関わる。
東証1部に上場するのは約2200社。東証は7月、1部企業全体の約3割にあたる664社がプライム上場維持基準に満たないと明らかにした。QUICKのデータをもとに日経ビジネスが分析したところ、8月24日時点でも東証1部の587社がプライム基準に達していなかった。
プライム基準未達企業は、再編後の経過措置により、当面はプライム市場に残留できるが、それが永続的であるかは保証されていない。プライム市場からの脱落を心配する地域経済界の声が噴出するのはこうした事情がある。
島根に大分、奈良、山形も・・・
「島根銀行がプライムから落ちれば、TOPIX(東証株価指数)に連動するパッシブ投資銘柄の対象から外れ、株価は低迷する。融資の選別が厳しくなるのではないか」。島根県のある企業の幹部は、こう心配する。
島根県の商工関係者は「プロパー(自前)融資の審査が厳しくなり、貸出金利が高くなるかもしれない。地元経済を急速に冷やすトリガーとなる」と身構える。日銀の金融緩和策による低金利下、早々に金利が跳ね上がるとは考えにくいが、融資を通じて企業活動を支える金融は“経済活動の血流”ともいわれるだけに、マイナスの影響を懸念する声が絶えない。
島根県には上場企業が3社ある。QUICKのデータによると(8月24日時点)、1部の山陰合同銀行は、プライム市場の上場維持基準をクリアしており、2部に上場するホームセンターのジュンテンドーも2部にあたるスタンダードに横滑りで上場予定だ。ところが、1部上場の島根銀は、流通株式時価総額と1日平均売買代金についてプライム基準を満たしていない。
国内最上位マーケットに上場する地元企業が減るインパクトはどの程度か。島根のある企業幹部はこう指摘する。「小規模事業者は、国や自治体の制度融資に支えられている。例えば、島根銀の株価が低迷し、プロパー融資が減るなら、地域を支える中堅企業の経営に影響を及ぼす。島根銀がプライムに残れるか残れないかは、地域全体に関わる問題だ」
地元の大手企業の代名詞だった「東証1部上場企業」からの転落。不安視するのは島根の関係者だけではない。東証1部企業が2社ある大分県では、情報通信事業のFIGがプライム基準未達だ。
東証1部企業が2社ある奈良県では、GMBが流通株式時価総額でプライム基準を達成できておらず、同じく東証1部企業が2社の山形県でも、ヤマザワが基準を満たしていない。
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